研究課題/領域番号 |
23KJ0115
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
増田 友哉 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | 国学 / 本居宣長 / 平田篤胤 / 近世思想 / 思想史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近世後期の国学者が神話解釈を通じて、人々の死生観や宇宙観等のコスモロジーをどのような形で創造したのかを明らかにする。その上で、市井の人々が国学者の思想をどのように受容し、行動変容したのかを明らかにする。そのため、本居宣長や平田篤胤といった著名な国学者の思想内容を理解するだけでなく、国学思想が市井の人々(在地の豪農・神職等)に如何に受容され、彼らの動機や行動にどのような影響を与えたのかを明らかにする。具体的には、幕末遠州地方の神職を中心とする草莽諸隊(戊辰戦争時に新政府軍に帯同した集団)である、遠州報国隊の人々に注目し、残された史料から彼らの思想を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
採用初年度にあたる2023年度は、昨年度からの研究の継続、及び基礎的な資料の収集を行いながら、①国学者の天体論、②平田篤胤の思想におけるコスモロジーの実態理解の研究に取り組んだ。 ①については、本居宣長における天文知識受容の理由を、儒学者との論争の中で天体論が必要となった点に求めた。その成果は「本居宣長の天文知識受容をめぐって:国学的宇宙論の成立序説」『日本研究』(68)として論文を執筆し公表した。また、佐藤信淵が西洋天文学が明らかにした宇宙の姿を取り込んだ神話解釈を行った点を検討した。その成果は、「佐藤信淵の宇宙論と神話解釈:宇宙の始まりは如何に語られるか」(日本宗教学会第82回学術大会)として学会報告を行った。 ②については、篤胤のコスモロジーを分析し、ウブスナ神が民衆の死を差配する存在として定位されていること、仏教の地獄を変奏することで国学的死後の場が形作られていることを明らかにした。それぞれの成果は、「平田篤胤におけるウブスナ神の役割の創造:篤胤のコスモロジーにおけるウブスナ神の位置をめぐって」『宗教研究』(406)、「篤胤の死後世界における罪と罰のゆくえ:訛伝としての地獄」『現代思想2023年12月臨時増刊号 総特集=平田篤胤』として発表済みである。 以上の成果によって、国学思想が創造したコスモロジーの一端を明らかにすることが出来た。国学者にとって、神話を解釈するという行為が、宇宙や死後といった問題の根源に迫るための営為であったということを本研究は明らかにし得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用初年度である本年度は、資料調査を勧めながら、研究成果の口頭発表を行うことが出来た。また、それに基づく論文を複数発表した。年度末には、博士論文を提出することも出来た。そのため、凡そ計画通りに研究を進めることが出来たと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
採用最終年度に当たる2024年度は、遠州国学の具体的な史料調査と翻刻作業を中心に行う予定である。フィールドワークや古文書の読解といった専門性の高い作業を行うため、熟達に困難があると想定されるが、実施作業の中で技術を高めていくことで適宜対応したい。また、本年度までに明らかにした宣長や篤胤の思想が、遠州と言う一地域においてどのように受容されたのかについても明らかにしたい。
|