研究課題/領域番号 |
23KJ0116
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斎藤 高雅 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
中途終了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 熱界面材料 / 高分子ナノコンポジット / 表面修飾 / 親和性 / 付着仕事 / 界面熱抵抗 / 分子動力学シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
高分子中に熱伝導性無機粒子を分散させた高分子コンポジット材料は電子・通信機器等の放熱材料として利用されており、材料の更なる高熱伝導化が求められている。本研究では、表面修飾ナノ粒子を含む高分子ナノコンポジット薄膜を対象とし、ナノ粒子/高分子間の親和性と熱抵抗を定量評価し、実際に薄膜の熱伝導率測定を行うことで「親和性-熱抵抗-熱伝導率」の相関を明らかにする。具体的には、分子動力学シミュレーションを用いてナノ粒子/高分子界面の構造・親和性・熱抵抗を定量評価する。また、実際に作製した薄膜の熱伝導率を測定し、実験と理論の紐付けを行うことで、熱抵抗を効果的に低減するための界面分子設計の指針を提示する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、表面修飾無機ナノ粒子を内包した高分子ナノコンポジット薄膜を対象とし、ナノ粒子/高分子間の親和性および熱抵抗を定量評価し、実際に薄膜の熱伝導率測定を行うことで、「親和性-熱抵抗-熱伝導率」の相関を解明することを目的とする。 2023年度はナノ粒子表面の一部を模擬した表面修飾アルミナ平板/高分子界面を対象に、全原子分子動力学シミュレーションによる界面親和性の評価を行った。親和性の指標の一つとして付着仕事(接触した2相を引き剥がすのに必要なエネルギー)を熱力学的積分法により算出し、付着仕事に及ぼす表面修飾率・修飾鎖長・高分子種の影響を検討した。修飾鎖には直鎖カルボン酸(ヘキサン酸、デカン酸、テトラデカン酸)、高分子にはポリプロピレン(PP)、ポリスエチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いた。また別の親和性指標として浸漬仕事(液体中の固体を液体の外に取り出すのに必要なエネルギー)を、付着仕事と高分子の表面張力との差から算出し、付着仕事の傾向と比較した。結果として、修飾鎖層に対する高分子の浸透度が大きいほど、また修飾鎖と高分子の混和性が高いものほど親和性が高いことが示された。 さらに、非平衡分子動力学シミュレーションによる界面熱抵抗の評価を行い、界面熱抵抗に及ぼす表面修飾率の影響を検討した。表面修飾により界面熱抵抗は低減し、高い修飾率において最小となった。これは、親和性に及ぼす修飾率の影響とは異なる傾向であり、界面熱抵抗においては必ずしも親和性だけでなく固体/高分子間の熱抵抗や修飾鎖の構造も重要な因子であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の要である分子動力学シミュレーションを用いた界面親和性(付着仕事)ならびに界面熱抵抗の評価手法を確立することができた。加えて、付着仕事および界面熱抵抗に及ぼす表面修飾率の影響に関する結果から、最適な界面設計の指針を得ることができた。ただし、界面熱抵抗に関しては表面修飾鎖や高分子種などを変更したシミュレーションまでには至らなかったため、今後計算を行い、データを拡充していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、理論的知見から予測される最適な表面修飾を実証するため、作製したコンポジット薄膜の熱伝導率を測定することで熱伝導率に及ぼす表面修飾の効果を調べる。また、分子動力学シミュレーションについても親和性および界面熱抵抗に及ぼす諸因子の影響を調査し、界面設計のためのデータを拡充する。これらを通じて、最終的には「親和性-熱抵抗-材料機能(熱伝導率)」の相関を明らかにする。
|