研究課題/領域番号 |
23KJ0132
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊地 秀樹 東北大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 中国近代政治史 / 国民革命軍 / 国民国家形成 / 戦時動員 / 中華民国 / 中国国民党 / 軍隊建設 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、中国国民党によって創設された国民革命軍に焦点をあて、台湾における豊富な一次資料を用いて、同党のもとでの近代的な国民国家建設の実態を解明する。 国民革命軍は、国民党が中華民国を建国するうえで創設した近代的軍隊とされているが、その形成過程やその運用実態については未解明な部分が多い。本研究では、一次資料に依拠してその形成と国共内戦以降の瓦解過程を検証する。それにより、日本や西欧諸国が形成した近代的国民軍隊とは異なり、中国では既存の社会構造と既存の武装集団に依拠した形で国民革命軍が作られ、その形成実態が中華民国の国民国家像を規定したことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、4月から7月まで台湾の国立政治大学、8月以降は中央研究院近代研究所を研究拠点として国民革命軍に関する一次資料の収集をおこなった。そのほか国家図書館、国史館においても資料収集を精力的におこなった。いずれの図書館、史料館でも日本では閲覧ができない国防部が作成した史料集や国民革命軍の将校に関する日記・回顧録を閲覧することができた。これらの資料によって日中戦争前に中国共産党の殲滅作戦を担った主力部隊と日中戦争の前線地域である江蘇省南部(江南地域)でおこなわれた遊撃戦について分析をおこなうことができた。 国民革命軍の主力部隊がどのような歴史的経緯によって形成されたのかについては、7月に開催された中国基層社会史研究会で口頭発表をおこなった。中国国民党は統一事業である北伐を達成すると軍縮や徴兵制度の導入を試みるも、地方軍事派閥の反対によって頓挫し、新たな内戦を惹起することになる。一方で国民革命軍の中央軍と称される主力軍は、逆説的にではあるが、軍隊の近代化への頓挫を利用してその規模を拡大させ、地域社会における徴兵基盤がなくとも兵員の獲得を可能にしたことが明らかになった。 日中戦争時期におこなわれた遊撃戦の動員実態については、11月にアジア政経学会の学会誌『アジア研究』に査読付き論文で発表した。日中戦争中におこなわれた遊撃戦では、先行研究で指摘されているような総力戦に基づく動員ではなく、むしろ徴兵基盤が脆弱で日中戦争までに武装解除できなかった在地武装団体を即成の部隊として動員していることを論文で明らかにした。 以上の研究成果から、国民党が政権を担う国民政府は、軍隊の近代化を目指す一方で、北伐までの兵員とその獲得方法に依存する形で地方軍事派閥や共産党との内戦を戦ったことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は台湾において精力的に資料収集活動をおこなうことができた。また、「研究実績の概要」に示したように査読論文と研究会での報告を資料収集のアウトプットとしておこなうことができたため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は日本へ帰国し、台湾で集めた豊富な資料を用いて学会報告ならびに論文投稿をおこなう予定である。本年度は通年で台湾へ滞在していたため日本での資料収集ができなかった。来年度は日本でも資料収集をおこなうことで日台双方の史料を駆使した研究をすすめる。
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