研究課題/領域番号 |
23KJ0141
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関根 大輝 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 光第二高調波発生 / 非線形光学効果 / 反強磁性ドメイン / 多極子秩序 |
研究開始時の研究の概要 |
空間反転対称性(P)と時間反転対称性(T)が同時に破れた磁気秩序下において、電気と磁気が結合した特有の現象が発現することが知られている。しかしながら、そのような磁気秩序はマクロな磁化などを持たないことから直接検出が困難である。本研究では、電気磁気活性な磁気秩序を有する物質を対象に、PやTの破れに敏感な光第二高調波発生を用いた直接検出を試み、スケールによらない電気磁気活性な磁気秩序の直接検出の基本原理の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、空間反転対称性(P)と時間反転対称性(T)の両者が破れた、すなわち電気磁気活性な磁気秩序が実現した天然物質およびメゾスコピック人工磁性体を対象に、光第二高調波発生(SHG)を用いてそれらの直接検出の基本原理の確立を目指すものである。SHGは非線形光学効果の一種で対称性の破れ、特にPとTの破れに敏感であるため、電気磁気活性な磁気秩序の検出に有効であることが予想される。 本年度は、主に反強磁性体MnTiO3を対象にSHGイメージングとその解析を行った。MnTiO3中の反強磁性秩序はPとTの両者を破るため、SHG活性である。SHGイメージング測定を温度を変えながら連続的に行うことにより、実空間像から直接SHG強度の温度依存性を議論することが可能になった。上記の解析を行うことにより、ドメインごとにSHG強度の温度依存性を高精度に検出できるようになった。これらの結果をさらに解析することにより、反強磁性オーダーパラメーターの温度依存性を見積もることができ、観測されたドメイン構造が反強磁性由来であることを示した。現在、これまでの結果をまとめ、論文投稿中である。また、入射光の波長を変えて同様の実験を行うことにより、深さ方向のドメイン分布の情報が得られることが分かった。現在この結果の解析を進め、論文投稿に向けて準備中である。 以上の結果は、SHGが電気磁気活性な磁気秩序の検出に有効であることを示している。また、MnTiO3中の秩序は多極子として表すことができ、多極子は様々な物理現象を統一的に記述できることから近年注目を集めている。よって、これらの結果は多極子の物理にも大きな貢献をもたらすことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、反強磁性体MnTiO3を対象に、温度変調とSHGイメージングを組み合わせた測定系の改良および解析プログラムの開発を行った。準備期間でもある昨年度までは、集光したレーザー光を用いたSHG測定からSHG強度の温度依存性を測定していたが、この改良により反強磁性ドメインごとにSHG強度の温度変化を精度よく抽出することが可能になった。その結果、反強磁性オーダーパラメーターの温度依存性も精度よく見積もることができた。さらに、入射光の波長を変えた測定から反強磁性ドメインの試料深さ方向の分布の情報が得られることが明らかになり、この結果は当初の計画には無い発見であった。当初の計画のメゾスコピック人工磁性体の実験等に関しては多少の遅れをとっているものの、上記の進捗を踏まえ、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた結果から、入射光を変えたSHGイメージングの実験をさらに進める必要性を見出せる。そのため、来年度はSHGスペクトル測定システムの構築を行い、MnTiO3のSHGスペクトルを測定する。そして、SHGスペクトルのデータをもとに別の波長でのSHGイメージングを行い、本年度行った研究をさらに推進する予定である。そして、電気磁気活性な反強磁性秩序およびドメインの性質を明らかにする。
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