研究課題/領域番号 |
23KJ0150
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
細野 竜也 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 走化性方程式 / 時間大域存在 / 有界性 / 函数不等式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では, 走化性による細胞のダイナミクスを記述する非線形連立偏微分方程式を対象とする. 走化性は, 胚発生や免疫などのメカニズムに重要な役割を果たす現象であり, 定式化される方程式系の解は時間大域的安定性や特異性の生成といった対照的な挙動を示すことが知られている. ここでは方程式系の線形項と非線形項から生じる臨界構造に着目し, 高次元空間に於ける解構造, 特に解の時間大域挙動に対する精密な特徴付けや閾値を解明する.
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研究実績の概要 |
本年度に実施した研究では、アルツハイマー病巣におけるミクログリアの走化性を記述する方程式系に対する初期値問題の解の時間大域挙動について焦点を当てた。特に、4次元空間の解の時間大域存在と有界性、及びその挙動に関わる初期質量の条件について考察した。小川卓克氏(東北大学)との共同研究では、非局所放物型走化性方程式の初期値問題の4次元空間に対する解の時間大域存在に着手した。ここでは、方程式系に備わる質量保存則とエントロピー構造に着目し、臨界型函数不等式の1つであるBrezis-Merle型不等式の開発と対称減少再配置の技法の適用から結果を得ることができた。その際、4次元空間における初期質量の閾値も同定することができた。Philippe Laurencot氏 (CNRS/Universite Savoie Mont Blanc)との共同研究では、連立放物型走化性方程式の問題に着手した。解の時間大域存在の研究では、この方程式系に備わる質量保存則とエントロピー構造を基に、Brezis-Merle型不等式と、化学物質に関するあるエネルギー汎函数の最小化, すなわち変分構造を考慮することで解のアプリオリ評価を得ることができた。他方、初期値問題における解の有界性の導出は、有界領域上の初期値境界値問題の場合とは異なり空間遠方の解の挙動のコントロールが本質的に要請されるため証明は困難である。そこで本研究では、方程式系の解に対する適当なエネルギー汎函数を新たに確立し、初期質量にある適当な小ささを仮定することで解の有界性が成り立つことを示した。特に初期質量の小ささの仮定は、Sobolevの不等式やHardy-Littlewood-Sobolevの不等式といった函数不等式の最良定数に起因することを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、走化性方程式系の問題を対象とし、その解の精密な特徴付けや閾値の同定を目的としている。本年度では、4次元空間における解が時間大域的に存在するための閾値の同定を当初の予定通り行うことができた。したがって、研究は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、2次元空間における走化性方程式系の解の有界性について考察する。本年度の4次元空間における研究により、2次元空間での既存の有界性の結果に改良の余地が見込めた。また、対数型知覚函数を伴う走化性方程式系の臨界構造についても並行して考察する。
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