研究課題/領域番号 |
23KJ0153
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坪井 和史 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | 在宅勤務 / テレワーク / 立地理論 / 都市経済学 / 経済政策 |
研究開始時の研究の概要 |
職場労働からテレワークへの移行により都市構造が変化することが指摘されているが、そのメカニズムは明らかではない。本研究では、テレワークのコストが低下すると企業の立地がどのように変化し、それが都市経済にどのような影響を与えるかを明らかにする。得られた主な結果は以下の2点である。(i) テレワークの拡大により、企業は都市中心部寄り、あるいは都市周辺部寄りに立地するようになる。(ii) テレワークは都市生産をより効率化し、都市をよりコンパクトにする。本研究は、2つの実証研究が統一的な理論モデルで表現でき、シミュレーションによって得られた既存の研究が解析的に説明できることを示した最初の研究である。
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研究実績の概要 |
職場での仕事から在宅勤務(Working from home)への移行が都市の構造を変化させることが示唆されているが、その理論的なメカニズムの解明は不十分である。本研究では、在宅勤務を行うコストが低下した場合に企業の立地がどのように変化するか、それが賃金や社会厚生など都市の経済にどのような影響を与えるのかを解析的に明らかにした。用いた手法は、家計と企業が内生的に立地を選択する理論モデル Ogawa and Fujita (1980)で、本研究では新しく在宅勤務の実施率が異なる2つの企業を導入して、それらの立地を分析した。得られた主な結果は以下の2点である。(i) 在宅勤務を行う費用が減少した際、テレワークを行う企業の立地は人口と在宅勤務の実施率によって2つの場合が存在する。人口が多く、在宅勤務の実施率が低い場合、企業は都市部に集積する。一方で、人口が少なく、在宅勤務の実施率が高い場合、郊外に分散する。(ii)在宅勤務の増加は企業のオフィス面積を小さくし、都市をよりコンパクトにすることで、賃金と厚生を増加させる。しかし、テレワークを行う企業が郊外に立地した場合は、企業間の取引費用が増加する為、負の立地外部性が生じる。本研究の貢献は、在宅勤務による企業の集積と郊外化に関する2つの実証研究を統一的な理論モデルで表現したことと、シミュレーションによって得られた既存研究が解析的に説明できることを示したことにある。これらの研究実績をまとめて、国際紙 The Annals of Regional Scienceに投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載されているテーマに関しては解析と論文執筆を終えて、国際紙The Annals of Regional Scienceへ投稿した。Major Revisionを受領後、2024年3月に修正再投稿ができた為、「おおむね順調に進展している」を選択した。Rejectされた場合には、迅速に修正を行い、他の国際ジャーナルへ投稿する。今年度末にはアクセプトされることを目標にする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の後続となるテーマに着手する。特に、在宅勤務の増加が交通混雑と都市経済に及ぼす影響を理論・実証的に明らかにしようとしている。都市での人口増加は交通混雑を発生させて、通勤コストの増加からオフィスに近い都心部の立地需要が増加する。一方、在宅勤務の増加は、通勤コストを下げて立地需要が都心部から郊外へ移る。このような家計の集積分散プロセスに加えて、在宅勤務は企業の生産性を変化させて社会厚生を増減させるが、その仕組みは明らかでない。これは、正の集積外部性と負の混雑外部性に関わるため、社会最適な在宅勤務推進政策を提言する上で重要な課題である。 この課題に取り組む為、本研究で用いた都市内立地モデルに交通混雑を導入した理論モデルを構築し、目的地が詳細にわかる人流データと経済データから定量分析を行う。
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