研究課題/領域番号 |
23KJ0200
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武藤 由依 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 半導体量子ドット / 機械学習 / 自動化 / 量子コンピュータ大規模化 |
研究開始時の研究の概要 |
量子コンピューターを今後発展させていくためには、量子ビットがより多く必要になる。しかし量子ビットの数を増やすのは簡単ではない。なぜなら数を増やせば増やすほど制御しなければならないパラメーターも増えてしまい、調整がかなり複雑になるからである。これをこのまま従来の人力で実行するのは、大規模系になるにつれ難易度的にも時間的にも次第に不可能になってくる。そこでこの課題解決に向け、本研究では機械学習の手法を用いて量子ビットの電子数等を自動的に調整する自動最適化手法についての研究を行う。そして将来的に人力では不可能なレベルの大規模自動調整への貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
集積性や既存の半導体技術との親和性の高さなどの観点から、半導体スピン量子ビットは量子コンピュータの構成要素として期待されている。将来的な量子ビットの高集積化に向けて、その制御パラメータの自動化が重要になる。今年度は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用い、2重量子ドットの電荷状態を5種類に分類する電荷状態自動推定器を実現し、実際の実験データにおける電荷状態推定を実証した。さらに推定器の判断根拠の可視化を行い、更なる性能改善が可能であることを実証した。本成果は学術論文誌APL Machine Learningに採択された。 推定器学習のためのデータは軽量なシミュレーションモデルで用意し、データの簡単化やノイズ耐性付与のための前処理を施し、CNNに学習させることで推定器を構築した。次にこの推定器を用いて実験データの電荷状態推定を行った。 その後、ブラックボックスである推定器の判断根拠可視化を行い、その結果をもとに推定器の改善を行うことで推定器の性能を向上させた。今回用いた実験結果では約93%の精度が得られ、そのエラーの殆どは電荷状態の境界近傍に集中している。このような境界近傍における多少のエラーは今後行うパラメータ最適化の際にはあまり障害にならないと考えられる。これらの結果はスピン量子ビットのための電圧自動調整の可能性を切り拓くものとなる。また、これまでブラックボックスとなっていた判断根拠を可視化することで、推定器の性能改善の指針となることを実証した。本手法は半導体スピン量子ビットによる量子コンピュータ大規模化に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であった機械学習による電荷状態推定器の実現と、推定器の判断根拠可視化によるモデル改善を実証することができ、さらにその内容で学術論文誌に採択されたことから、おおむね予定通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策として、まずは二重量子ドットにおける電圧値の自動最適化手法を考案する。その際は今年度の成果物である電荷状態推定器を用いる予定である。 またこのような自動最適化手法について、スピン状態の観測や制御等まで含めて拡張していくための検討についても行う。
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