研究課題/領域番号 |
23KJ0206
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮本 知英 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 進化 / 発生生物学 / 骨形成 / 棘型類 / レインボーフィッシュ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は「かたちの変わりやすい器官・構造」の新たなモデル系として棘条ヒレの発生メカニズムを解明し、それを軟条ヒレのものと比較することで、棘条ヒレに特異的な「発生メカニズムの変更を駆動する仕組み」が何であるかを推論することである。この推論を元に、棘条ヒレが多様なかたちに進化することが出来た要因の理解を目指す。 具体的には、新規にモデル生物化したレインボーフィッシュを用いて棘条ヒレの発生メカニズムを解析する。さらに、本研究では多様にかたちが変化した生き物(チョウザメ・キアンコウ)を用いた解析も計画している。これらを統合することで、上記の目的の達成を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では進化の中で「かたちの変わりやすい器官・構造」の新たなモデル系として棘条ヒレに注目する。棘条ヒレはアンコウの釣り竿やコバンザメの吸盤などの大規模な変形構造が多く知られるが、一方多くの魚種が一般的に持つ軟条ヒレではほとんど変形構造が知られていない。そこで、棘条ヒレの発生メカニズムを解明し、それを軟条ヒレのものと比較することで、棘条ヒレに特異的な「最終的な形態と作り出す発生メカニズムの変更を駆動する仕組み」が何であるかを推論する。さらにこの推論を元に、棘条ヒレが多様なかたちに進化することが出来た要因の理解を目指すことを目的とする。 この目的を達成するために、「課題①レインボーフィッシュでの分子遺伝学技術の確立」「課題②棘条ヒレ形成領域への間充織の移入範囲を決める遺伝子の解明」「課題③棘条の骨形成に関わる構造タンパク質動態の解明」の3つの課題を設定する。本研究では、ゼブラフィッシュやメダカなどのモデル魚種が持たない「棘条ヒレ」という形質を研究対象とすることから、新規モデル生物としてレインボーフィッシュの実験系を確立する必要がある。本年度では、課題①を達成し、レインボーフィッシュのステージ表と分子遺伝学技術の確立に関する学術論文を2報出版した。課題②については概ね計画通りの進捗があり、ゼブラフィッシュでのヒレ形成領域を決定する因子の候補を明らかにした。課題③については計画以上の進展があり、棘条の形成メカニズムについて多くの知見を得られ、現在論文投稿の準備中である。さらに課題③に加えて、多様にかたちが変化した生き物(チョウザメ・カワハギ・ハタ)を用いた解析も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題1. レインボーフィッシュのモデル生物化 モデル生物として広く用いられているゼブラフィッシュやメダカには棘条ヒレが存在しないため、本研究では新規モデル生物としてレインボーフィッシュを用いる。今年度には、レインボ ーフィッシュの発生ステージ表の作製と分子遺伝学技術の確立を行った。発生ステージ表では 背鰭の鰭条骨の有無を基準として成長段階を判別出来ることを示し、これを国際誌で発表した (Miyamoto et al., 2023a, Dev. Dyn.)。分子遺伝学技術に関しては、メダカの手法を応用することでTol2トラ ンスポゾンシステムとCRISPR/Casシステムを用いた遺伝子編集技術を確立し、その手法を国際誌で発表した (Miyamoto et al., 2023b, Dev. Dyn.)。 課題2. 背鰭間充織の移入範囲の決定メカニズムの解明 申請者は、ゼブラフィッシュを用いた背鰭形成領域に特異的に発現する遺伝子の探索の結果、 いくつかの背鰭間充織の移入範囲の決定に関わる候補遺伝子を申請時点で検出していた。これらの遺伝子のうち、ノックアウトによって背鰭の形成が起こらなくなるものや背鰭形成領域に 特異的に発現するものが含まれていることを新たに明らかにした。 課題3. 棘条の骨形成に関わる構造タンパク質動態の解明 棘条の形成領域での構造タンパク質の染色や課題1で確立したCRISPR KO技術・薬剤処理などを用いることで、棘条の形成メカニズムに関して多くの情報を取得することが出来た。この結果、棘条の形成メカニズムは軟条のものとは大きく異なることが明らかになった。さらに、形態が変形した棘条を持ついくつかの魚種で細胞の分布を観察した結果、棘条の形態多様性が高いことに申請者が明らかにした棘条特有の形成メカニズムが関わっている可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
申請時点の段階では、棘型類の背鰭間充織の移入範囲の決定メカニズムを解明するために、レインボーフィッシュ体節のRNA-seqを行う予定であった。しかしレインボーフィッシュのゲノム情報が現在までに存在せず、全ゲノムの解読を行うことやゲノム情報を用いないトランスクリプトーム解析を行う難易度が高い。そのため、ゼブラフィッシュでの解析によって得られた候補遺伝子に絞った発現部位の解析などを行う方が。背鰭間充織の移入範囲の決定メカニズムをより効率的に解析することが可能である可能性が高い。そのため、申請時点で掲げていたレインボーフィッシュを用いたトランスクリプトーム解析を行うことを現在では計画していない。 棘条の骨形成機構の解明に関しては、現在までに順調に知見が得られている。この課題については、現在学術論文の投稿を準備中である。
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