研究課題/領域番号 |
23KJ0220
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山口 涼 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 小児期逆境体験 / 世代間伝達 / トリオ / 脳発達 / マルトリートメント / 脳回 |
研究開始時の研究の概要 |
誰の子どもとしてこの世に生を享けるのか、生まれてくる子どもは選ぶ権利を持たない。虐待やネグレクトなどの小児期逆境体験(Adverse Childhood Experience; ACE)は、その体験の当事者のみならず、当事者の子どもの身体的・精神的健康にも悪影響を及ぼすことが報告されている。言わば、「逆境の影響の世代間伝達」が存在すると考えられる。本研究では、父・母・子で構成される親子トリオを対象とした脳画像解析により、親のACEと親子双方の脳構造の関連性を検討し、「逆境の影響の世代間伝達」を成立させる生物学的機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は本研究の対象である15歳以上の子とその父母から成る親子トリオ44組のデータ取得を行い、前年度までの取得分を含め146トリオのデータを揃えることができた。このうち、脳画像の前処理が完了した113トリオを対象として、親のACEと子どもの脳構造の関連性の検討を行った。 発生早期に形成され、発達を通じてほぼ安定な脳構造指標である脳回指数(大脳皮質表面の入り組み具 合)に着目し、親のマルトリートメント被害経験(身体的・心理的虐待やネグレクトなどの不適切な養育を受けた経験)と子どもの脳回指数の関連性を共分散分析によって検討した。その結果、父親が軽度以上のマルトリートメント被害経験を持つ子どもは、父親に被害経験が無い子どもよりも、両側の中心溝、帯状溝、上側頭溝などにおける局所脳回指数が小さいことが確認された。一方、母親の軽度以上のマルトリートメント被害経験と子どもの局所脳回指数に有意な関連は見られなかった。しかし、重回帰分析を行ったところ、母親における中程度以上のマルトリートメン ト被害経験が多いほど、子どもの右中心溝、左帯状溝, 左頭頂後頭溝周囲の局所脳回指数が小さ い傾向が確認された。 以上より、父親のマルトリートメント被害は軽度以上である場合に、母親のマルトリートメント被害は中程度以上である場合に、それぞれが子どもの脳発達に異なる影響をもたらすことが明らかとなった。 これまで多くの先行研究が着目してきた母親のマルトリートメント被害のみならず、父親のマルトリート メント被害が子どもの発達に負の連鎖を引き起こす機序を解明する必要性が示唆される。上記の結果は日本発達神経科学会第12回学術集会にて発表した。また、本研究の母体となる プロジェクト『TRIO study(日本語名:家族の脳科学)』のプロトコル論文を共同第一著者として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一定のペースでデータ取得を継続できており、目標サンプルサイズの達成までの道筋が見えている。脳画像の前処理におけるエラーを手動で修正する技術を習得し、精度の高い脳構造指標を得られるようになった。研究計画の一つである遺伝子解析の実施に向け、共同研究者との議論も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画当初の目標サンプルサイズであった親子トリオ180組の収集完了を目指し、2024年度も引き続きデータ取得を実施する。同時に、脳画像の前処理と質問紙検査の回答のデータ化を進める。 「研究実績の概要」の欄に示した解析結果を受け、父親と母親のマルトリートメント体験の複合効果は子の脳発達にどのような影響を及ぼすのかという新たな疑問を持った。父親と母親双方がマルトリートメント被害経験を持つ群、片方が持つ群、どちらも持たない群、に子どもを分類し、脳回指数をはじめとする脳構造指標や行動指標の比較を行いたいと考えている。 また、本研究の最終目標である遺伝子情報との関連解析を実現するために、これまでに収集してきた唾液試料からのDNA抽出作業を進める。
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