研究課題/領域番号 |
23KJ0229
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
大毛 瑞貴 山形大学, 理学部, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ブロック共重合体 / ミクロ相分離 / ナノ粒子 / ヤヌス光沢膜 |
研究開始時の研究の概要 |
1.カテコール誘導体のみからなるブロック共重合体(BCP)を用いた異種材料のナノスケール自在配列プラットフォームの構築 多機能性分子であるカテコール誘導体(DOPAm)の無保護制御重合により、保護・無保護DOPAmからなるBCPを合成する。薄膜化および相分離構造の配向制御により異種材料の自在配列プラットフォームを構築する。 2.on-demand脱保護による"超ハイブリッド材料"の創製 相分離構造を鋳型とし金属(1)還元あるいはナノ粒子接着を行う。続いてon-demand脱保護を行うことで時空間的にナノ材料の集積化を実現する。多様な異種材料をナノスケールで配列させ、高機能性を持つ"超ハイブリッド材料"の創製を行う。
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研究実績の概要 |
本研究ではミクロ相分離両相を用いた異種ナノ粒子の自在集積のためのプラットフォーム構築を最終目的としている。異なる高分子鎖が連結したブロック共重合体 (BCP) は異種ブロック間のミクロ相分離によって lamellar 構造や cylinder 構造を形成する。そのため、機能性を持つモノマーを導入することで BCP の相分離構造に機能性が付与できる。そこで、粒子接着特性や酸化還元特性を有する catechol を用い、保護 catechol と無保護 catechol からなる BCP(p(DOPAm-b-protected-DOPAm) )を創製することで目的が達成できると考えた。 本年度ではまず、OH 基を保護しない catechol 誘導体 (pDOPAm) の合成を RAFT 重合により達成した。重合挙動を検討したところ、重合時間が 120 min 以上で数平均分子量が時間に対して増加し、いずれも分子量分布が 1.4 以下であった。これより重合が十分に制御されていることが示された。これは、重合溶媒の DMF が pDOPAm の OH 基を"on-demand 保護"したことで副反応を抑制したためであると考えられる。続いて、pDOPAm 薄膜を作製し、ナノ粒子の集積化を検討した。ガラス基板上に成膜した薄膜は無色透明であった。一方で、硝酸銀水溶液に浸漬させ、アニールすると表面が金光沢、裏面が銀光沢を示すヤヌス状薄膜が形成された。ここで薄膜の断面形状を走査型電子顕微鏡により観察したところ、それぞれの界面における銀の形態が異なることが明らかとなった。これより様相が異なるナノ粒子を集積させることで特異的な光学特性を発現することが明らかとなった。最後に、ミクロ相分離両相を用いた異種ナノ粒子の自在集積に向けた p(DOPAm-b-protected-DOPAm) の合成を達成した。BCP 薄膜を作製し熱処理を行うと 10 nm 程度のミクロ相分離構造を形成することが明らかとなった。さらに、HCl 蒸気に暴露することで protected-DOPAm の脱保護を促し、逐次機能化が達成できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度の研究計画の遂行に加え、関連する研究事項において特許の出願 (2件) および論文化 (1件) を行なった。本年度は、catechol 誘導体のみからなる BCP の設計および合成と形成される相分離構造の解析を遂行する予定であった。まず、OH 基を保護しないcatechol誘導体 (pDOPAm) の合成を RAFT 重合により達成した。続いて、pDOPAm 薄膜を作製し、ナノ粒子の集積化を検討した。ガラス基板上に成膜した pDOPAm 薄膜は無色透明であった。一方で、硝酸銀水溶液に浸漬させ、アニールすると表面が金光沢、裏面が銀光沢を示すヤヌス状薄膜が形成された。ここでヤヌス状薄膜形成メカニズムの詳細を検討し、様相が異なるナノ粒子を集積させることで特異的な光学特性を発現することが明らかとなった。本研究内容を英国王立化学会が発行する RSC Adv.にて発表した。また、特許を出願した。この結果は当初の研究計画にはなかったが、論文1報と特許出願という実績を残した良い結果である。 最後に、無保護 RAFT 重合によって合成した pDOPAm を連鎖移動剤として用いることで異種ナノ粒子の自在集積に向けたp(DOPAm-b-protected-DOPAm) の合成を達成した。さらに、薄膜化することで 10 nm 程度のミクロ相分離構造を形成することが明らかとなった。本件も特許出願中である。以上の結果および実績より、研究の遂行が順調であり、当初の計画以上に学術研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では p(DOPAm-b-protected-DOPAm) の合成を達成し、10 nm 程度の微細な相分離構造が形成されることが明らかとなった。そこで次年度では、最終目標である異種材料の自在配列プラットフォームの構築に向け、形成されるミクロ相分離構造の配列・配向制御を行う。これに伴い、protected-DOPAmブロックの保護基が及ぼす相分離構造への影響や最適な逐次脱保護の条件を検討することで達成できると考えられる。 続いて、種々の金属塩やナノ粒子を用い、薄膜中で形成される相分離両相に対し異種ブロックに異種材料を配列させる。ここでは形成される相分離構造中でのナノ粒子の直接合成や粒子接着特性を利用したナノ粒子の導入を行う。これにより、p(DOPAm-b-protected-DOAPm)を異種材料の自在配列プラットフォームとしての利用を実現する。 以上より、令和 6(2024) 年度では、金属ナノ粒子のプラズモン共鳴による電場増強を利用した異種ナノ粒子の機能拡大をするような新規機能性材料の構築へと展開を進める。
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