研究課題/領域番号 |
23KJ0252
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
水野 陽介 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 寿命 / メチオニン制限 / 幼若ホルモン / ショウジョウバエ |
研究開始時の研究の概要 |
必須アミノ酸であるメチオニンの摂取量を減らす「メチオニン制限」が、個体寿命の延伸をもたらすことが様々な生物において報告されている。しかし、その背景に存在するメカニズムには不明な点が多い。そこで本研究では、1.メチオニン由来のメチル基供与体S-アデノシルメチオニンが昆虫の幼若ホルモンの生合成に必須である 2.幼若ホルモン量の減少が寿命延伸を引き起こす の2点に着目し、メチオニン制限が幼若ホルモン生合成に与える影響と、それに伴う生理状態の変動、特に寿命について明らかにすることを目指す。
|
研究実績の概要 |
幼若ホルモン生合成器官であるアラタ体におけるメチオニン制限状態がショウジョウバエの寿命を延伸させるかを検証するために、アラタ体特異的にメチオニン分解酵素を過剰発現させた個体の寿命を計測した。結果、アラタ体でメチオニン分解酵素を過剰発現させた個体はコントロール個体よりも有意に寿命が延伸していた。メチオニンはアラタ体細胞内でメチル基供与体であるS-アデノシルメチオニン(SAM)の生合成に用いられ、SAMはまた幼若ホルモン生合成において重要なメチル基供与体であることから、アラタ体内におけるメチオニン量の減少はSAMおよび幼若ホルモン量の減少を伴っていることが十分考えられる。メチオニン分解酵素過剰発現による寿命延伸が幼若ホルモン量の減少に起因するのかを確かめるために、アラタ体特異的にメチオニン分解酵素を過剰発現させた個体に幼若ホルモン類縁体であるメソプレンを摂食させ、それらの個体寿命を計測した。仮説と一貫して、メソプレンを摂食したメチオニン分解酵素過剰発現個体は、メソプレンを摂食していない個体において見られる寿命延伸がキャンセルされた。アラタ体におけるメチオニン分解酵素過剰発現によって体内幼若ホルモン量が減少するという結果と併せると、アラタ体特異的なメチオニン制限状態によって幼若ホルモン量が減少し、個体の寿命延伸が誘導されると考えることができる。また、完全合成培地を利用したメチオニン摂食制限実験を行い、メチオニン摂食制限によって個体寿命が延伸するという先行研究の追試に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、アラタ体特異的なメチオニン制限状態によってショウジョウバエ個体の寿命延伸が見られること、それが幼若ホルモン類縁体摂食によってキャンセルされることを見出した。これらは本研究課題における仮説である「メチオニン制限によって幼若ホルモン生合成量が減少し、個体寿命が延伸する」を支持する重要な結果である。また、所属研究室においても完全合成培地を用いたメチオニン摂食制限による寿命延伸を再現することに成功した。この成果によって、今後メチオニン摂食制限に関わる実験を行う上での基盤が整ったと言える。以上のことから、本研究課題は順調に進行していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はメチオニン摂食制限によって起こる寿命延伸が、幼若ホルモン類縁体の投与によってキャンセルされるのか、つまりメチオニン制限による寿命延伸に幼若ホルモン量の減少がどの程度必要なのかを検証していく予定である。また、本研究課題に先んじて作成したSAMレポーター系統が上手く機能しなかったため、アラタ体におけるSAM量の変動を捉えるための別の手法を考案し、検証することも目指す。さらに、メチオニン摂食制限時の体内幼若ホルモン量をLC-MS等を用いて直接的に定量し、コントロール条件との比較を試みる予定である。
|