研究課題/領域番号 |
23KJ0267
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村上 優介 筑波大学, グローバル教育院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
2025年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2024年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2023年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 非線形ラマン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では睡眠を制御する神経メカニズムを、非線形ラマン分光法を用いて明らかにする。これを目指し、分子(化学結合)の振動モードを同定可能なMultiplex coherent anti- Stokes Raman scattering(MCARS:エムカース)を用い、膜電位や分子組成の時空間分布を観察可能な新規イメージング法を開発し、覚醒から睡眠への遷移におけるマウス大脳皮質表層の神経細胞の変化を明らかにする
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研究実績の概要 |
膜電位のラベルフリーイメージングおよび睡眠分子の探索を目指し、膜電位を操作しながらMultiplex CARSスペクトルを取得することが可能な装置を共同研究先に立ち上げ、生細胞とマウス脳スライスの測定を行なった。研究成果として、CARS顕微鏡下で膜電位を走査できる手法を確立し、膜電位毎によってCARSスペクトルに変化があることを発見した。また、Multiplex CARSとSHGによって、脳のラベルフリーイメージング法とMCR-ALS法による特徴的な分子組成の探索法を確立し、通常のマウス脳においても、複数の分子がラベルフリーで可視化できることを確認した。海馬や脳室においても、特徴的なSHGシグナルを発見した。これは、免疫染色法によって線毛根であることを同定した。multiplex CARSイメージングとの同時測定によって線毛根は海馬において特徴的な分布を示すことが明らかになり、線毛根の分子組成を示すCARSスペクトルも取得した。また、培養神経細胞においても、一次繊毛の発生前に線毛根が存在していることを確認した。これらはCARSによって膜電位の定量が可能になること、通常のマウスと断眠マウスを比較する上で重要な手法となることが考えられる。線毛根の可視化においては神経細胞における線毛根の存在は重要視されていなかったが、今回確立した可視化手法によって繊毛病やがんとの関連性の解明につながることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜電位のラベルフリーイメージングを目指し、パッチクランプ法によって膜電位を操作しながらMultiplex CARSスペクトルを取得することが可能な装置を共同研究先に立ち上げた。精細胞を用い、MUltiplex CARS 顕微鏡下にてパッチクランプ法を行い、膜電位毎におけるCARSスペクトルを取得した。その結果CH領域と指紋領域において膜電位によって強度の変化が顕著なバンドを発見した。これは、培地のカリウムイオンの変化による膜電位の変化によっても同様に変化をしたため、膜電位由来であると結論づけた。 また、パッチクランプ法を行いながら CARSイメージングを行うためのイメージング系の検討を行った。通常のCARS顕微鏡はサンプルを走査することが多いがガラスピペットを細胞に差し込むとイメージングが困難となる。そのため、ガルバノミラーのペアを2組用意し、MUltiplex CARSのスキャンデスキャンイメージング装置を開発した。現在30マイクロメートル四方のイメージングに達成している。 さらに睡眠分子の探索を目指し、MUltiplex CARS/SHGのマウス脳イメージング法を確立した。CARSスペクトルにMCR法を導入することによってスペクトルをいくつかのコンポーネントに分けることが可能になり、分子の一斉探索が可能となった。 またSHGイメージングによって海馬や脳室の線毛根のイメージングが可能となった。健常のマウスでも線毛根は細胞内で特異的な分布を撮ることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究先の異動のため、再度装置の立ち上げが必要である。よりスキャンデスキャンイメージングに特化した装置の開発を行う。膜電位を変化させながらCARSイメージングを行い、膜電位の定量イメージング法を確立する。 マウスの脳に関しては今年度確立したイメージング法を断眠したマウスと比較し、睡眠分子の探索を行う。また、断眠したモデル以外にも、線毛根(中心体)の位置は繊毛病や癌などにも関連しているという先行文献がある為、その比較も行う。
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