研究課題/領域番号 |
23KJ0278
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷村 陸 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 老化 / 運動 / マイオカイン |
研究開始時の研究の概要 |
「Exercise is medicine」という言葉が存在するように、運動は身体に多様な恩恵をもたらすことが知られている。その一方で、運動の効果は加齢に伴って減弱することも多く報告されており、高齢者の運動効果を高める方法の確立が求められている。本研究では、運動効果を媒介する因子の1つとして運動。筋収縮時に分泌される骨格筋由来の生理活性物質(マイオカイン)に着目し、加齢に伴う運動効果減弱のメカニズム解明を行う。さらに加齢によるマイオカイン分泌応答の変化が多臓器に及ぼす影響や、筋収縮時のマイオカイン分泌応答を活性化する戦略の確立にも挑む。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、運動効果を媒介する因子の1つとして運動、筋収縮時に分泌される骨格筋由来の生理活性物質(マイオカイン)に着目し、加齢に伴う運動効果減弱のメカニズム解明を行うことを目的として行っている。今年度は、培養細胞を用いた老化を再現する実験モデルの確立に取り組んだ。マウス骨格筋培養細胞(C2C12)に対し、継代を繰り返す「複製老化モデル」を用いることで、In vitroでの加齢した骨格筋の再現を試みた。継代を繰り返した骨格筋は老化細胞マーカーの顕著な蓄積がみられた。現在、老化細胞の蓄積したC2C12(以下、老化C2C12とする)におけるマイオカインの発現レベルや培地中へのマイオカイン分泌量の解析を行っている。さらに、老化C2C12と他細胞の分泌物を介した関係の解明にも取り組んでいる。分化した老化C2C12とマウス脂肪培養細胞(3T3-L1)の共培養を行うことによって、骨格筋の老化細胞蓄積が内分泌を介して脂肪組織に及ぼす影響の解明を目指している。
また、動物実験も並行して実施しており、代表的な抗加齢介入であるカロリー制限またはラパマイシン投与が筋収縮によるマイオカイン分泌に及ぼす影響の検討を行った。これらの結果は特筆すべき結果として、カロリー制限があるマイオカインの収縮による分泌応答を促進することを見出した。これらの実験結果は、国際学会および国内学会において発表しており、一部のデータは国際学術誌への投稿準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況がやや遅れている理由としては、以下の2つが挙げられる。1つ目は骨格筋培養細胞の老化モデル検証に時間を要したことである。培養細胞の老化モデルとして知られている「複製老化モデル」および「過酸化水素曝露モデル」の2つにフォーカスして予備検討を行い、より哺乳類の自然老化に近いモデルの確立に取り組んでいたため、メインの実験に取り掛かるまでに時間を要した。2つ目は、3T3-L1脂肪培養細胞の導入である。私が所属する研究室は骨格筋の分子生理学を専門としているため、3T3-L1に関するノウハウや試薬が存在しなかった。3T3-L1の増殖・分化の初歩的な検討に時間を要してしまい、進捗が遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の計画としては、第一に骨格筋培養細胞から恒常的に分泌されるマイオカインが老化の影響を受けるのかを確認し、老化の影響を受けるマイオカインを絞り込む。さらに、老化した骨格筋培養細胞を電極の入ったシャーレを用いて培養し、電気刺激による収縮を行う。この実験から、電気刺激誘発性収縮によって分泌増加が報告されているいくつかのマイオカインの分泌動態が老化の影響を受けるのかを検証する。上記の実験と並行して、共培養モデルを用いた「老化/非老化骨格筋ー脂肪組織」の組織連関の解明に取り組む予定である。以上の研究フローを経て、骨格筋の老化がマイオカインを介して他臓器に及ぼす影響の検討を行う。 また、マイオカインから定義を広げて「運動時の細胞外小胞(エクソソーム)」に着目した研究も計画中である。こちらは研究計画書には含めていなかった内容ではあるものの組織連関を司る因子としては無視できない存在であり、解析手法も発展が進んでいるため、解析対象として焦点を当てることとした。自身のデータや先行研究から、高強度の運動を行った際に分泌されるエクソソームに、脂肪組織の熱産生を刺激する生理活性があるという仮説を立て、実験を行う。 以上のような研究から、老化・肥満/代謝性疾患などの全人類が脅かされうる身体の変性に対し、運動科学や内分泌学的な観点から解決策の提示につながる成果を出したい。
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