研究課題/領域番号 |
23KJ0280
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金田 優香 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | galaxies / dark matter / galaxy evolution / galaxy structure / galaxtic dynamics |
研究開始時の研究の概要 |
コールドダークマターモデルは宇宙の大規模構造をよく説明できる一方で、銀河・矮小銀河程度の小さいスケールで、カスプ-コア問題等、観測との矛盾がいくつか指摘されている。本研究の目的は、この矛盾を引き起こす主要なバリオン物理機構が何なのかを解き明かすことである。矛盾を引き起こす物理過程として、本研究では Ogiya & Mori (2014) が提案するランダウ共鳴による超新星爆発フィードバックエネルギーの輸送に主軸をおいたモデルに着目し、本モデルによって形成されるダークマターハローの質量密度分布に対する予言が宇宙論的流体シミュレーションと一致するか、また観測を再現するかを調査する。
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研究実績の概要 |
本研究の最終ゴールであるコールドダークマターモデルによる理論予言と観測との間の小スケールでの矛盾の解決に向け、該当年度は、その一つであるミッシングサテライト問題に注目した。 ミッシングサテライト問題とは、銀河サイズでコールドダークマターによる宇宙論的N体シミュレーションが予言する衛星ハローの数が、観測される衛星銀河の数を上回る問題である。解決策として、銀河の形成が抑制されたほぼダークマターのみの衛星ハロー(ダークサテライト)の存在を提案するものがある。ダークサテライトpopulation の調査は、ダークマターの性質を知るための重要な手掛かりとなる。 一方で、M31 は銀河系に最も近い大質量円盤銀河であり、そのステラーハローには銀河衝突の痕跡が多数観測されている。中でもStream C と Stream D はユニークな特徴を持ち、天球面上で互いに平行、奥行方向の距離も近く、幅は同程度、金属量も等しい。これらの形成モデルは未だ提案されていない。我々はその形成過程を初めて、「元々単一であったステラーストリームに他天体の衝突による摂動が加えられることにより二つに分裂する」と仮説した。Stream C、D 周辺に他の構造がないことより、摂動因子はダークサテライトの可能性が高い。解析モデルによって、ホストポテンシャルの効果により軌道が初期状態より内側に散乱された粒子と外側に散乱された粒子の間に軌道運動の位相差が生まれ、それが成長することによりストリームが二つに分かれるとわかった。また、この影響は摂動因子の大きさ、相対速度に依存し、質量依存性が最も強く、ストリームと同等から一桁重い程度の質量範囲のみで分裂を起こすことがわかった。加えて、ストリームと摂動因子をN体としたシミュレーションにより、より現実的な状況でもストリームが分裂することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
該当年度は、最終的な宇宙論的流体シミュレーションを用いた研究をするための第一段階として、スレッドおよびプロセス並列化されたN体シミュレーションを用いて研究を行うことに成功した。この結果について、国際会議で4件(うち口頭発表4件)、国内会議で5件(うち口頭発表3件)発表を行うことができた。 一方で、第一段階の研究に、予定されるより時間をかけてしまったと言える。この理由として、シミュレーションの結果で得られた物理に対する理解を深めるための解析モデルの作成に時間をかけたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、該当度の研究内容を論文にまとめて発表する。 第二に、次年度はカスプ-コア問題に注目する。一度の星形成による瞬間的SNフィードバックでは、カスプ-コア遷移を起こせないことが明らかになっている(Ogiya & Mori, 2011)。一方でOgiya & Mori (2014) において、超新星爆発が周期的に発生することを考慮すると、カスプ-コア遷移が起こることが示された。しかしながら、このモデルはバリオンポテンシャルの変動に理想的な仮定をおいて得られた結果であり、現実的な星形成モデルや宇宙論的効果を考慮して検証する必要がある。進捗状況を鑑み、元々予定していた独自コード開発を行う代わりに、次案として提案していた汎用コードを使用する方針への転換を決定した。汎用コード Swift を利用し、銀河形成入りの宇宙論的流体シミュレーションを行う。計算には、筑波大学計算科学研究センター学際共同利用のスーパーコンピュータCygnus、Pegasus、Wisteria-Oを使用する。シミュレーションで形成されたダークマターハローとOgiya-Moriモデルの予測とが一致するかを調べることにより、Ogiya-Moriモデルの妥当性を検証する。加えて、シミュレーションで得られた星形成史、ダークマター質量密度分布の中心部の冪・コア半径と、観測との比較を行う。
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