研究課題/領域番号 |
23KJ0306
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上野 尚久 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 遺伝的多様性 / 種多様性 / 創発 / 多様性効果 / 生産性 / ショウジョウバエ |
研究開始時の研究の概要 |
生物の種数は群集や生態系の生産性を、種内変異の豊富さは個体群の生産性を非相加的に高める。多様性の生態的効果は多様性効果と呼ばれる。多様性効果の背景にある生態的機構の普遍性と種内でみられる多様性効果の生態的動態に対する重要性を理解するために、どの遺伝子が種内多様性効果や種間多様性効果に寄与するのか、種内と種間の多様性がもつ多様性効果はどちらの方がどれほど卓越しているか、種内多様性効果が種の共存にどれほど影響しているか、について検証する。
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研究実績の概要 |
生物多様性は、生態系や群集、個体群の動態や生態的な機能を非相加的に変化させる(多様性効果)。近年、種間の多様性効果だけでなく、種内の多様性効果を検証する研究が盛んになってきている。ただし、ほとんどの先行研究では、この2つの多様性効果は個別に検証されているため、直接的な比較が不十分であり、これらの生態的な動態における相対的な重要性の理解は発展途上である。本研究では、ショウジョウバエ属昆虫5種を用いて、種多様性と遺伝的多様性を実験的に操作した集団を作成し、それらの生態的機能(生産性)を同時に測定することで、種間多様性効果と種内多様性効果を直接比較した。まず、飼育できるショウジョウバエ5種を選定し、各種において、1頭の雌成虫に由来する単雌系統(近交系統)を複数個作成した。作成した系統を用いて、いくつかの形質の表現型を測定し、2系統間の表現型距離を算出することで、種内と種間で形質変異を評価した。その結果、系統ごとにさまざまな特徴を示し、種内よりも種間の方が形質変異は大きかった。続いて、飼育実験を実施し、実験集団の生産性を測定した。集団の作り方は、①各種の各系統を単独で飼育した単独集団、②各種内において、異なる2系統を混合飼育した同種異系統集団、③異なる2種の中から1系統ずつ選び、混合飼育した異種集団である。その結果、集団ごとにさまざまな生産性が示された。最後に、飼育実験から得られた生産性を用いて、種間多様性効果と種内多様性効果を評価したところ、種内多様性効果の方が種間多様性効果よりも大きいことがわかった。2系統間の表現型距離の大きさは多様性効果を説明しなかったものの、種間において、2系統間の表現型距離が大きくなるほど、多様性効果は極端な正負の値を示していた。本実験によって、種内多様性効果の生態的インパクトが種間多様性効果のそれと比べて大きいことをより直接的に実証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種のショウジョウバエ系統を順調に継代飼育できている。飼育実験の進捗も順調である。2023年度に得られた結果をさまざまな学会で発表することもできている。また、一部の系統において、全ゲノムリシーケンスをすでに実施しており、ゲノム配列データの解析を進めている。飼育実験、表現型測定の実験、ゲノム解析いずれにおいても、質の高いデータが集まっている。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノムがまだ読めていない系統のゲノムリシーケンスを実施する。そのうえで、種間または種内多様性効果に寄与する遺伝子の探索を進めていく。また、系統間の競争能力の指標を実験的に定量することで、多様性効果と多種共存がどのような関係にあるのか模索したい。
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