研究課題/領域番号 |
23KJ0309
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 綺乃 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 雪氷藻類 / ツボカビ / 感染率 / 氷河 / アラスカ / クリオコナイトホール |
研究開始時の研究の概要 |
氷河上では,雪氷藻類の繁殖による氷河の暗色化が,氷河の融解を加速させる原因の一つとなっている.この雪氷藻類に寄生するツボカビという菌類は,雪氷藻類の個体数を減らして氷河の暗色化を抑える効果を持つ可能性があることから,その生態の理解は氷河の融解量を予測するためにも重要である.しかしながら,氷河性ツボカビの実態と感染拡大の要因,暗色化へ与える影響はこれまで明らかになっていない. 本研究では,雪氷藻類に寄生するツボカビの感染拡大に影響を与える環境条件を明らかにし,ツボカビによる雪氷藻類の繁殖抑制効果およびアルベド低下への影響を数理モデルにより定量評価することを目的とする.
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研究実績の概要 |
雪氷藻類の繁殖による氷河表面の暗色化が,近年北極圏の氷河の融解が加速している原因の一つとなっている.本研究では,雪氷藻類に寄生するツボカビという菌類が,雪氷藻類の繁殖と氷河表面のアルベドにどう影響するのかを定量し評価することを目的としている. アラスカの氷河を対象に,2022年の6月から9月に氷河表面で採取された試料を用いて,顕微鏡観察,有機物量・不純物量測定,溶存化学成分分析を行った.顕微鏡観察の結果,氷河上で繁殖する緑藻の1種に寄生するツボカビに関して,仮根の形態や寄生のタイプに注目して観察したところ,すでに形態的に分類されている3つのタイプに加え,新たに形態の異なる1タイプが観察された.これらのツボカビのシングルセルDNA解析およびメタバーコーディングを利用した遺伝子解析については,引き続き解析を進めている. 藻類に寄生するツボカビの感染率と環境条件の異なる氷河表面の微生物の生息場所である,氷表面,風化氷,クリオコナイトホールと呼ばれる水たまり,水流での感染率を比較した結果,すべての生息場所でツボカビ感染が見られ,特にクリオコナイトホールで感染率が高いことが明らかになった.この結果から,安定した水環境とその水の流れがツボカビ感染に影響する可能性があることが示唆された. 異なる雪氷藻類2種について,氷河の氷表面における藻類へのツボカビの感染率の季節的な変化を求めた結果,藻類2種の間で感染率の上昇に違いが見られ,最終的に10%以上もの差があることがわかった.この結果から,藻類種によってツボカビ感染に違いがあることが明らかになり,ツボカビ感染が藻類の繁殖を抑制する可能性があることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りアラスカの氷河で採取されたサンプルの分析が進んでおり,雪氷藻類へのツボカビの感染率の季節的な変化を明らかにできる見通しがたった.ツボカビ感染率が高くなる環境要因の特定にも着手している.また,今年度はモンゴルとアラスカの氷河で調査を行うことができた.特にモンゴルでは,ツボカビ感染に重要な場所であると考えられるクリオコナイトホールに注目したサンプルの採取,アラスカでは,氷河横断方向での雪氷サンプルの採取に成功し,微生物に関する分析や溶存化学成分分析等も進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,アラスカの氷河上で繁殖する複数の雪氷藻類種へのツボカビの感染率の季節変化を求め,ツボカビのシングルセルおよびメタバーコーディングによるDNA解析も進めていく.すでに分析済の有機物量測定や溶存化学成分分析については,感染率の結果と比較し,ツボカビ感染拡大の要因について考察する.アラスカの氷河だけでなく,グリーンランド等の他の地域の氷河サンプルについても分析を行い,北極圏氷河のツボカビ感染を複数地域で比較し特徴を明らかにする.また,複数の雪氷藻類種とツボカビの多重感染に関する成果公表を目指す.
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