研究課題/領域番号 |
23KJ0322
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柘植 紀節 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 星間ガス |
研究開始時の研究の概要 |
銀河の基本的な構成要素である星間ガスは銀河進化の基盤となる。星間空間は様々な物理状態の星間ガスで満たされており、密度、温度、空間規模は数桁にわたる。銀河進化の理解には、このような多層構造の星間ガスを多波長観測し、低温の水素分子ガスから高温ガスまでを包括的に理解する必要がある。申請者はこれまで、電波解析から大質量星の元となる水素分子雲の形成過程を明らかにした。本研究ではさらにX線解析を加えることで高温ガスの形成機構を調べる。低温ガスから高温ガスへの進化を解明し、銀河同士の相互作用によるガス衝突、大質量星形成、超新星爆発など、「大質量星の誕生から終焉」までの星間ガスの進化過程の確立を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では電波とX線を組み合わせて3つの相 (水素原子, 水素分子, 高温プラズマ) にわたり, 星間ガスの物理状態 (密度, 温度, 運動) を克明に調べることで, 銀河の基本的な構成要素である星間ガスの進化過程を明らかにする. 特に星間ガス進化のミッシングリンクである「広がったX線放射の加熱機構」の解明を目指す. 広視野高感度X線観測 (eROSITA), 高エネルギー分解能X線観測 (XRISM), 高分解能HI,CO観測 (SKA, ALMA)を用いて, 星間ガスの運動エネルギー, プラズマのエネルギー, 大質量星のエネルギーを推定し, "ガス衝突起源の加熱"と"大質量星起源の加熱"を切り分ける. 銀河系内の星団から銀河同士の衝突までの全空間スケール (数10 pc から数10 kpc) をカバーし, 広がったX線放射の加熱過程を定量的に推定する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は X 線と電波を用いた星間ガス進化に関連して以下の 2 つの研究を行った.
1. 大マゼラン雲全面の星形成に関する研究: これまでの研究から, 大小マゼラン雲の銀河間相互作用による大規模な水素原子ガス流の衝突が, 巨大星団の素となる高密度の分子ガス雲を形成していることが示された. 一方, 検証は代表的な星形成領域数箇所に限られていた. そこで大マゼラン雲全面に渡り水素ガスの解析を行い, 大質量星形成領域と衝突の関係を調べた. その結果, 大質量星の 7 割以上が衝突圧縮領域に位置していることがわかった. これは銀河間相互作用によるガス衝突が銀河全面の星形成に重要な役割を果たしていることを示唆する. さらに大質量星の数と衝突圧縮ガス圧力との間には正の相関が見られ、圧力が星形成における重要なパラメータである可能性が示された. 成果は査読付き論文として出版済みである (Tsuge et al. 2024a, PASJ in press).
2. 大マゼラン雲の拡散X線放射に関する研究: 大マゼラン雲の星形成領域 N11 を対象として, 拡散X 線放射の物理的性質と, 低温の水素原子/水素分子ガスの性質を調べた. 目的は, 銀河間潮汐相互作用起源のガス衝突と, 拡散 X線放射放射との関係を調べることにある. 水素ガスの空間分布に基づき, 4つの領域の X 線スペクトルを解析した. その結果, X 線のダークレーンは水素ガスによる吸収によるものであることがわかった. また, N11 の星形成バブル内の X 線放射は大質量星からの加熱のみで説明ができる一方, 周囲に kpc 規模の拡散 X 線放射は, ガス衝突による追加的な衝撃波加熱で形成された可能性を見出した. 本成果は査読付き論文として受理されている (Tsuge et al, 2024b, A&A, in press.).
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今後の研究の推進方策 |
本年度は大マゼラン雲に続き小マゼラン雲、スターバースト銀河の解析を行う. 大小マゼラン雲全面の eROSITA データの解析を進めるために, ドイツの Friedrich-Alexander大学で 1-2ヶ月程度, 在外研究を行う. 本研究完遂のためには電波だけでなく多波長の最新観測データの解析手法を身につける必要がある. スキルの習得と観測結果の解釈や議論には, 各波長の専門家との協力が欠かせない. 国際共同研究を開始するため, 多波長観測による星間物質に関する国際研究会を企画・開催して国際的共同研究のキックオフと位置付ける予定である
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