研究課題/領域番号 |
23KJ0327
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 文秋 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | バイオフィルム / 微小環境 / 細胞外マトリクス / アクティブマター / トポロジカル欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
細菌の細胞集団はバイオフィルムとして知られており、自然環境における細菌の支配的な生活形態である。細菌の集団制御には、この集団の立体構造設計を明らかにすることが重要であるが、立体構造の形成過程についての詳細は明らかにされていない。細菌集団の立体構造設計の理解へ向けて、集団内の細胞同士の力学的相互作用に着目する。細胞集団の配向秩序内では細胞の向きが局所的には揃わない特異点、トポロジカル欠陥が生じる。マトリクス生産は細菌集団の自発的な力学的ストレスに誘導されることから、特定のトポロジカル欠陥において力学的ストレスを被って突出した細胞がマトリクス生産を導き、集団立体化の柱梁となるという仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
細菌は多細胞生活形態であるバイオフィルムを形成する。この集団的高次構造を支える柱梁となる細胞外マトリクスの時空間的な形成パターンの設計図を描くことを目的に研究している。本年度は、マトリクス発現開始域を特定するために、寒天パッド下あるいはマイクロ流体デバイス上の擬二次元的な空間において増殖する細菌集団を観察した。増殖する細胞集団において不均一なマトリクス遺伝子発現を見出し、特定の細胞配向パターン領域においてそれが顕著であることを発見している。現在は、複数の独立した実験を行い、この特異的なパターン周辺の遺伝子発現の定量的・統計的解析を行なっている。また、この特異的な領域において、細胞が周囲の細胞の生育による力学的ストレスを知覚してこの遺伝子発現が誘導されていると考えられたため、細菌一細胞をマイクロ流体デバイス内で培養しながら、圧力を加えることのできる系を構築した。この実験系の構築はフランスとの国際共同研究によって実現した。この系を用いて遺伝子発現誘導に必要な圧力の値、また誘導反応のタイムスケールを定量する予定である。さらに、来年度はヒト結腸をマイクロ流体デバイス上に模倣構築した系を用いて、この上で生育する細菌集団を観察する予定である。この腸模倣系を構築するために必要な国際共同研究を計画し、ミーティングを行い、渡航日程や実験計画を本年度中に概ね確定させた。これらの進捗的成果をいくつかの研究会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した研究計画の通り、細菌細胞集団内に生じる特異的な点であるトポロジカル欠陥の周囲で細胞外マトリクス遺伝子の発現誘導を見出した。このトポロジカル欠陥において、生育する細胞同士の衝突が生じさせる力学的ストレスを細胞が被ると考えられたため、力学的ストレスによる発現誘導がすでに報告されている大腸菌の細胞外マトリクスを定量対象とした。柔らかい寒天パッドを用いることで、三次元な細胞集団の生育と遺伝子発現箇所の一致を見出している。また、それに比べて硬い素材でできているマイクロ流体デバイスを用いることで、二次元空間に閉じ込められた細胞集団を観察することを可能にした。これによってより正確に細胞配向を観察することができた。さらに、細胞外マトリクス遺伝子発現を誘導する力学的ストレスの値を細胞への圧力値として定量するために、細菌一細胞に圧力を加えるマイクロ流体デバイスをフランスとの共同研究によって構築した。本年度には、大腸菌の生育環境の一つであるヒト腸内での細菌生育と配向、遺伝子発現を調べるためにマイクロ流体デバイスを用いた模倣腸構築を行う予定である。そのための国際共同研究を本年度中に取り付け、来年度の渡航準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初期待していた、トポロジカル欠陥周囲での細胞外マトリクス遺伝子の発現誘導が観察できている。予定通り、これらの定量的・統計的な解析を進めていく。そのために複数の独立実験を行い、得られたデータに対して画像解析を行う。また、研究計画段階では予定していなかった一細胞加圧実験を行う。この実験に必要なマイクロ流体デバイス実験系は本年度に、その核となる部分を構築した。来年度は、細胞外マトリクス遺伝子の発現を誘導する細胞の力学的ストレスを細胞への圧力値として定量するために、実験系の調整を行い、様々な圧力をかけた際の細胞の反応を観察・定量する。さらに、当初の予定にあった通り、大腸菌の生育環境の一つであるヒト腸内で細菌細胞がどのように生育するかを調べるために、ヒト結腸を模倣したマイクロ流体デバイス上での細菌一細胞観察系を構築する。この構築については、海外の研究機関と共同で進める。すでにミーティングを済ましており、渡航日程も概ね確定している。デバイス上に構築した模倣腸上で生育する細菌を一細胞レベルで観察し、その配向とトポロジカル欠陥および細胞外マトリクス遺伝子発現を定量する。
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