研究課題/領域番号 |
23KJ0329
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野津 翔太 東京大学, 理学系研究科, 助教
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 原始惑星系円盤 / アストロケミストリー / 星・惑星形成 / 太陽系外惑星 / スノーライン / 原始星 / ALMA / 電離率 |
研究開始時の研究の概要 |
原始惑星系円盤内のダスト進化、中心星の光度・X線&UV強度変化、宇宙線電離、光蒸発の影響等も順次考慮に入れ、円盤の物理構造と化学構造の進化を同時に扱うモデルを構築し、スノーライン位置や分子組成分布の進化を探る。並行して分子輝線の放射輸送計算を行い、スノーライン等の同定に有効な輝線の特徴を調べ、ALMA等への観測提案と観測を進め、次世代望遠鏡計画のサイエンス検討にも繋げる。系外惑星の大気化学構造と惑星形成環境の関係を探るべく、系外ガス惑星大気の化学構造計算を行い、円盤化学構造分布との比較を行う。申請者の研究により最新の円盤・系外惑星大気の観測に裏付けされた現実的な惑星形成理論の構築が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、原始惑星系円盤(以下"円盤")の化学構造計算と系外惑星大気の化学構造計算等を通じ、最新の観測結果による裏付けも踏まえた現実的な惑星形成理論の構築に繋げる事、および並行して分子輝線の放射輸送計算を行い、スノーライン等の同定に有効な輝線の特徴を調べ、ALMA望遠鏡等への観測提案と観測を進める事を目的としている。令和5年度は後者のALMA望遠鏡を用いた観測研究に主として注力し、まずFU Ori 型の降着バーストを示す天体であるClass I 原始星 V883 Ori 周りの円盤において、13C同位体を含む10種類の酸素を含む複雑有機分子の輝線放射を検出した。またそれらの分子のCH3OHに対する存在比が原始星エンベロープに比べ著しく増加し、彗星67Pでの存在比とほぼ同じであることを発見し、円盤での効率的な有機分子(再)生成の可能性を明らかにした。更に初めて円盤内の有機分子の12C/13C比を決定し、その値(~20-30)が一般的な星間空間(~69)の値に比べ低く、有機分子生成の起点となるCOが13Cに富む可能性を示した. (Yamato, Notsu et al. 2024) 同じV883Oriの円盤において13C(17)O輝線の観測にも成功し、空間方向の柱密度分布や円盤質量の見積もりを進めている。将来観測検討(GREX-PLUS, ngVLA, LST等)も各波長の望遠鏡に対して進めており、将来計画検討会における招待講演や、サイエンス白書の執筆なども進めた。前者の理論的研究についても、X線・UV放射の時間進化等を取り入れた計算の準備を進めたほか、ダスト進化や電離率等の円盤内空間分布に関する研究の最近の進展を踏まえ、これらの効果を取り入れた化学構造計算に向けた議論も進めた。またこれまでの研究内容が評価され、日本惑星科学会 2022年度最優秀研究者賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は後者のALMA望遠鏡を用いた観測研究に主として注力し、期待以上の成果を上げることができた。まずFU Ori 型の降着バーストを示す天体であるClass I 原始星 V883 Ori 周りの円盤において、13C同位体を含む10種類の酸素を含む複雑有機分子の輝線放射を検出した。またそれらの分子のCH3OHに対する存在比が原始星エンベロープに比べ著しく増加し、彗星67Pでの存在比とほぼ同じであることを発見し、円盤での効率的な有機分子(再)生成の可能性を明らかにした。さらに初めて円盤内の有機分子の12C/13C比を決定し、その値(~20-30)が一般的な星間空間(~69)の値に比べ低く、有機分子生成の起点となるCOが13Cに富む可能性を示した。(Yamato, Notsu et al. 2024) また、同じV883Oriの円盤において13C(17)O輝線の観測にも成功し、空間方向の柱密度分布や円盤質量の見積もりを進めている。(筆頭査読論文準備中) その他別の原始星円盤においても紫外線に起因する化学層状構造・宇宙線電離率の分布を明らかにし、現在筆頭査読論文を準備中である。 将来観測検討(GREX-PLUS, ngVLA, LST等)も各波長の望遠鏡に対して進めており、将来計画検討会における招待講演や、サイエンス白書の執筆なども進めた。前者の理論的研究については観測研究に注力した関係で進捗がやや遅れているが、X線・UV放射の時間進化等を取り入れた計算の準備を進めたほか、ダスト進化や電離率、乱流度等の円盤内空間分布に関する研究の最近の進展を踏まえ、これらの効果を取り入れた化学構造計算に向けた議論も進めた。また新たにALMA大規模観測プログラムDECOの理論モデルチームの議論に参加し、円盤内の元素組成比(C/O比)を決定するモデル比較を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の準備を踏まえ、原始星段階から円盤散逸期までの物理構造と化学構造の時間進化を同時に扱うモデルの構築を進める。X線・UVの時間進化に加え、ダスト進化や電離率、乱流度等の円盤内空間分布に関する研究の最近の進展を踏まえ、これらの効果を詳細に取り入れた化学構造計算を順次進め、円盤内での現実的な物理進化を考慮した化学進化過程を明らかにする。また令和5年度に引き続き、物理構造進化の影響を受けやすいH2O関連分子や有機分子、イオン分子などの分子輝線に関して、ALMA望遠鏡を用いた原始星円盤・原始惑星系円盤の観測研究をさらに進め、化学進化モデルの検証に繋げる。そして、各波長の将来計画望遠鏡(ngVLA, GREX-PLUS, LST等)に対しての観測予測の議論も更に進める。惑星大気組成に関しても、上記の円盤詳細化学構造計算の結果を初期条件(元素組成)として取り入れた議論・計算を進める。
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