研究課題/領域番号 |
23KJ0334
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 壽視 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 間隙水 / 地下水 / 大陸棚 / ラジウム / 栄養塩 |
研究開始時の研究の概要 |
陸棚海域は海洋における主要な生物生産の場であり、その高い生物生産性は河川水や地下水、外海水を介して供給される豊富な栄養塩によってもたらされている。近年、堆積物中に含まれる間隙水の水柱への流入現象が栄養塩供給経路として重要であることが浅海域を中心に明らかになってきた。しかし、陸棚域で生じる間隙水流入の実態はほとんど分かっていない。本研究では、間隙水流入に伴う栄養塩供給量を陸棚スケールで評価し、それに関わる規定要因を明らかにする。また、陸棚域における間隙水由来栄養塩の輸送過程を明らかにし、陸棚域の海洋生態系に間隙水由来栄養塩が果たしている役割を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では陸棚海域の堆積物から水柱へ流入する間隙水が、高い生物生産性を示す陸棚海域の栄養塩動態や一次生産に対してどのような役割を果たしているのかを定量的に明らかにすることを目的としている。この目的達成のために、間隙水流入に伴う栄養塩供給量とその空間分布、それに関わる規定要因、間隙水由来栄養塩の輸送過程を評価する。 2023年度は、利根川河口域から陸棚海域に至る範囲において調査船を用いた海洋観測(漁業調査船たか丸、新青丸KS-23-16)を夏季に実施し、栄養塩濃度やラジウム同位体(間隙水の指標)のデータ、堆積物に含まれる間隙水サンプルを取得した。また、流入河川(利根川・常陸利根川)や砂浜域(鹿島灘・九十九里浜)においてそれぞれ河川水や間隙水のサンプリングを実施し、上記と同様のデータを取得した。 間隙水のRa濃度は表層海水や河川水と比較して数十倍高い値を示した。表層海水のラジウム濃度は河川水と沖合海水の単純な混合では説明できない値を示し、高いラジウム濃度を示す間隙水の流入が生じていることが明らかとなった。また、間隙水の栄養塩濃度は表層海水と比較して10倍以上高く、間隙水が利根川沖海域への栄養塩輸送経路となりうることが示唆された。そこで、浅海域堆積物から表層混合層への間隙水フラックスとそれに伴う栄養塩フラックスを定量化した。表層混合層以深(深度18-110 mの範囲)で採水した一部の海水では表層海水のラジウム濃度を上回り、浅海域以深においても間隙水流入現象が生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋観測・河川水および間隙水サンプリングの実施や化学分析を進めることができた。それらの結果により、間隙水由来物質の分布や間隙水フラックスを評価できた。本年度主に得られたデータは夏季や表層に限られたものではあるが、達成目標の一部である間隙水の栄養塩特性の評価や間隙水フラックスの定量化などの研究遂行ができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の観測同様、調査船を用いた海洋観測、河川水・間隙水サンプリング、ラジウム同位体の分布や間隙水フラックスの定量化を行い、それらが普遍的な現象・値であるかを確認する。また、表層混合層以深の堆積物からの間隙水流入が示唆されたことから、水平+鉛直的な採水によるラジウム同位体の空間分布や、陸棚海域の堆積物に含まれる間隙水のラジウム同位体濃度、その空間的な変動要因の評価を試みる。 2023年度の途中からは遊漁船を用いた利根川沖における定期観測(毎月)を実施しており、ラジウム同位体や栄養塩等の観測データを蓄積している。今後も引き続きデータを収集し、時間的な変動も含めた解析を行う。
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