研究課題/領域番号 |
23KJ0371
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 聡 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 室町幕府 / 戦国時代 |
研究開始時の研究の概要 |
15世紀後半から16世紀半ばにかけての戦国期における室町幕府の政治史に関する研究においては、(1)戦国期全体を通じた議論を深めること、(2)中央権力としての側面と全国政権としての側面の相互関係を明らかにすることが課題である。 本研究は、幕府の首長である将軍に仕え、中央と地域権力の交渉役を担った、将軍直臣を対象とすることで、二つの課題に取り組む。 課題(1)については、将軍直臣の室町幕府での役割について、戦国期全体で変化する点・共通する点をそれぞれ検討する。 課題(2)については、将軍直臣の活動から、中央権力としての側面と全国政権としての側面の相互関係を考察する。
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研究実績の概要 |
戦国期室町幕府研究の、検討対象が限定的である点、戦国期を通した検討がなされない点、中央権力の側面と全国政権の側面の相互関係が明らかでない点、という三つの課題に、将軍直臣に注目して取り組む研究作業として、2023年度は、従来注目されてこなった史料の調査と、先行研究でも利用されてきた史料の再検討を中心的な作業として行なった。 従来注目されてこなった史料の調査としては、将軍直臣の伊勢氏とその関係者が作成した、戦国期前半の史料の調査を進めた。調査の結果、全国支配に関して、伊勢氏とその臣下が、いずれの史料でも、全国各地の地域権力と交渉を持っており、将軍直臣伊勢氏の重要性が改めて明らかになった。中央権力の側面では、幕府の経済基盤である御料所について、先行研究での指摘以上に、戦国期の御料所は広範囲にわたり、長期間支配が維持されていたこと、そうした御料所支配への伊勢氏の関与が判明した。現在、地域権力との交渉、御料所、さらに両者の関係について、それぞれ論文の執筆作業を進めている。 これまで利用されてきた史料の再検討については、「御前落居記録」「御前落居奉書」という、室町期の室町幕府の政務で使用された史料について、戦国期にどのように管理・利用されたか調査し、本件に関する論文を投稿した。「御前落居記録」「御前落居奉書」は、現在に至る作成・伝来の過程が不明確であったが、戦国期から近世前半にかけては、伊勢氏の被官であった蜷川氏が保有し、史料の内容を蜷川氏が知識として利用したこと、そうした状況の背景に、戦国期幕府の政治構造の変化を想定した。本論文の執筆作業から、将軍直臣関係の史料の作成・伝来という情報から、戦国期室町幕府の政治史を考える方法を獲得し、さらに、室町幕府の将軍直臣が、武家故実の情報・文物を近世に至るまでどのように伝えたかという新たな研究視角を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、歴史学の研究の基礎である、史料の分析を中心に、作業を進めることによって、多くの知見を得ることができた。また、これまで注目されてきた史料の再検討の作業も行い、一点の論文を発表している。
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今後の研究の推進方策 |
今度の研究推進方策として、三点考えている。 第一に、継続的な史料の検討、調査である。2023年度は、戦国期の三つの史料の検討を中心に行なったが、いずれも戦国期の前半であり、戦国期後半の検討が必要となる。戦国期後半についても、未検討の史料は多く残っており、その検討を進める。 第二に、御料所を素材に、中央権力の運営のあり方、全国政権・中央権力の関係をより詳細に検討する。2023年度の研究作業から、御料所の重要性が浮き彫りになっており、引き継続き検討を進めていく。 第三に、将軍直臣のうち、伊勢氏とそれ以外の共通点・相違点に留意しながら作業を進める。本研究では、戦国期室町幕府における伊勢氏の重要性に注目しているが、伊勢氏が他の将軍直臣と比較して、どのような位置にあるかを常に念頭に置く。
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