研究課題/領域番号 |
23KJ0379
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分60020:数理情報学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水谷 隆平 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 2/3-劣モジュラ関数 / 劣モジュラ関数最小化問題 / 多項式時間アルゴリズム / 優モジュラ彩色 |
研究開始時の研究の概要 |
グラフの辺彩色とは、隣接する辺同士が同じ色とならないような各辺の色付けのことである.グラフの辺彩色に関するVizingの定理は,優モジュラ関数とよばれる連続関数の凹性に当たる性質を持つ集合関数の拡張である,三重優モジュラ関数の枠組みに拡張されている(優モジュラ版Vizingの定理).本研究では,優モジュラ版Vizingの定理で存在が示されている色付けを求める効率的(多項式時間)アルゴリズムの設計を目指す.
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研究実績の概要 |
劣モジュラ関数とは,集合を入力として受け取り値を返す集合関数の一種であり,組合せ最適化分野において盛んに研究されているとともに,機械学習,ゲーム理論など多様な分野に対して応用を持つ重要な関数クラスである.劣モジュラ関数は連続関数における凸性にあたる性質を持つため,その最小値を効率的に求められることで知られている.劣モジュラ関数最小化問題には最小カット問題をはじめとする多くの応用があるため,効率的なアルゴリズムの設計について盛んに研究されてきた.特に,劣モジュラ関数最小化アルゴリズムの応用先の一つとして,優モジュラ彩色定理とよばれる,二部グラフの辺彩色定理を劣モジュラ関数の枠組みに拡張したものがある.この彩色定理における色付けは,劣モジュラ関数最小化をサブルーチンとして含むアルゴリズムで構成できることが知られている. 交付申請書における研究計画では,劣モジュラ関数の拡張である1/3-劣モジュラ関数を効率的に最小化するアルゴリズム(申請書には三重優モジュラ関数を最大化するアルゴリズムと記していたが,同じものである)を用いて,一般グラフ版の優モジュラ彩色定理である優モジュラ版Vizingの定理の彩色を効率的に求めることを目標としていた. 本年度の研究成果として,劣モジュラ関数の拡張ではあるが,1/3-劣モジュラ関数よりは狭い関数クラスである2/3-劣モジュラ関数を最小化する効率的な(多項式時間)アルゴリズムを開発した.このアルゴリズムでは,2/3-劣モジュラ関数最小化問題を2/3-劣モジュラ多面体上の線形最適化問題に帰着し,その線形最適化問題を動的計画法や貪欲法ベースのアルゴリズムにより多項式時間で解いている.また,本アルゴリズムを用いることで,優モジュラ版Vizingの定理における彩色を多項式時間で構成できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では,2/3-劣モジュラ関数の拡張である,1/3-劣モジュラ関数の最小化問題を解く効率的なアルゴリズムを設計し,それを用いて優モジュラ版Vizingの定理における彩色を効率的に構成するアルゴリズムを得ることを予定していた.しかし,1/3-劣モジュラ関数の最小化問題を解くには指数回オラクル呼び出しが必要であり,効率的に解けないことが既に示されていたため,予定を変更して1/3-劣モジュラ関数よりも狭いクラスである2/3-劣モジュラ関数を最小化する効率的なアルゴリズムを設計し,それを用いて彩色を得るアルゴリズムも設計した.結果的に,彩色を効率的に得る部分については達成したため,概ね予定通りであると考える.
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今後の研究の推進方策 |
優モジュラ彩色定理と優モジュラ版Vizingの定理の共通の一般化を得ることを今後の研究の方向性として考えている.優モジュラ彩色定理は二部グラフに対する辺彩色定理であるKonigの定理の拡張であり,優モジュラ版Vizingの定理は一般のグラフに対する辺彩色定理であるVizingの定理の拡張である.実はKonigの定理とVizingの定理をともに特殊ケースとして含む彩色定理はまだ知られていないため,まずは両者の共通の一般化を得ることを目指す予定である.
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