研究課題/領域番号 |
23KJ0439
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越智 三枝子 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 病理画像解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、腫瘍とその周辺の各種細胞間の相対的位置関係を定量化する新規AIの開発な らびにがん治療に有用なバイオマーカーの探索と確立を行うことである。 具体的には、以下の3つの項目に従って研究を実施する。項目(1):数万症例の病理組織画像に 対し、独自開発したAIを用いて各種細胞領域を自動判別する。項目(2):各種細胞領域の相対 的位置関係を定量化するAIの開発を行い、腫瘍組織を特徴づける生物学的情報の抽出を行う。 項目(3):omicsデータや臨床情報を詳細に解析することにより、各種治療法や予後について患 者層別化が可能なバイオマーカーを探索する。
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研究実績の概要 |
項目(1) 全収集症例病理組織画像の各種細胞領域の自動判別に関して、まず、2箇所の医療機関から収集した進行型胃癌手術検体約200症例について、がん領域のアノテーションを実施した。その後、それら多施設由来のH&E染色画像に対する、上皮、平滑筋、リンパ球、形質細胞、骨髄細胞、白血球、赤血球、内皮細胞の8種の細胞領域の自動判別を行う独自開発AI(SegPath)の頑健性を高めるため、多臓器H&E染色標本について多種類の染色条件で染色し、スマートフォンを含めた13種類の撮像媒体で画像を撮影することによって、H&E染色画像の大規模データセットを作成した。このデータセットを用いて学習を行ったAIが、優れた腫瘍組織識別能を有する事を示した。また、Simon.G et al.の発表した炎症細胞を検出する既存AI(HoverNet)と比較してSegPathの細胞/組織検出能が、少なくとも本邦の複数施設由来のH&E染色画像において、より優れていたことを明らかにした。 項目(2) 各種細胞領域の相対的位置関係を定量化するAI開発/バイオマーカー探索に関して、Cancer Hallmarkに基づき病理学的に解釈可能な特徴量を抽出した。H&E染色画像から検出した約6000万個の細胞について、それらの特徴量を計算した。計算した細胞ごとの特徴量をもとに近傍関係捕捉に特化した深層学習技術を用いて画像内の各種細胞間の相関性や空間的/量的関係を定量化するAIを開発し、現在、新規バイオマーカー候補を網羅的に探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目(2) 各種細胞領域の相対的位置関係を定量化するAI開発/バイオマーカー探索 に関して、細胞並びに組織レベルでの特徴量の抽出やAIモデルでの学習を含めたフレームワークを形成し終えている。現在進行胃癌検体200症例について、組織型推定に対して、AIモデルが有効に機能することを確認している。さらに、組織レベル、細胞レベルで予測に重要な役割を果たした領域の可視化が可能である。さらに、項目(1) 全収集症例病理組織画像の各種細胞領域の自動判別において作成したH&E染色画像の大規模データセットを用いることで、画像色調やテクスチャに対してロバストな事前学習モデルを作成しており、項目(2) のAIに組み合わせることにより更なる精度向上が認められることが予想される。
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今後の研究の推進方策 |
項目(1)に関して、上皮、平滑筋、リンパ球、形質細胞、骨髄細胞、白血球、赤血球、内皮細胞の8種の細胞に加えて、線維芽細胞、好中球、好酸球、組織球を識別可能なAIを作成中であり、識別可能な細胞種類が増えることにより、腫瘍微小環境レベルでAIの予測に対する解釈性の向上が期待される。項目(2)に関して、症例拡充、細胞および組織レベルでの特徴量抽出終了後、癌のドライバー変異や生存予後、Microsatellite instability statusなどを予測するAIを訓練予定である。
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