研究課題/領域番号 |
23KJ0462
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大野 昴紀 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2024年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
|
キーワード | 看護分野 / 脳活動 / バーチャルリアリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、看護師の臨床現場における多重課題対処時の意思決定要因とメカニズムの解明である。臨床現場における多重課題問題を再現したバーチャルリアリティ(VR)アプリを熟練看護師と看護学生に体験していただく。次に、磁気共鳴機能画像法(fMRI)にて撮像したVRアプリ使用前後の脳内活動部位やネットワークにおける変化を解析・比較し、多重課題に伴う意思決定・遂行機能と脳内活動の関係を明らかにする。また、VRアプリ使用中に計測する機能的近赤外分光法(fNIRS)による脳活動データや視線・行動データとfMRI結果の相関を解析することで、多重課題対応におけるリアルタイムのメカニズムを検証する。
|
研究実績の概要 |
臨床現場における看護師の多重課題は、新人看護師の多くが困難と感じており、臨床現場における有害事象とも関連がある。経験年数の多い看護師は新人看護師と比較してより効率的に動くとされているが、看護経験による考え方や行動の違いを定量化することは困難である。そんな中で、脳活動、特に前頭前野は多重課題で重要な人間の意思決定において大きな役割を担うと考えられている。看護師の多重課題においても、経験年数の違いが脳活動の変化に関係する可能性があるが、まだ明らかにされていない。そこで、本研究ではまず仮想環境を用いて多重課題における看護師の脳活動と看護経験の関係を明らかにすることを目的とした。 研究者はまず研究①として、仮想環境下における多重課題時の熟練看護師と新人看護師の前頭葉の脳血流量の変化に関する探索的な検証を行なった。Virtual Reality技術による仮想環境は数多くの業務を実戦的形式で何度も自由に状況を変化させながら再現できることから看護教育への応用もされており、多重課題の看護教育を目的として開発されたVRアプリを体験環境に使用した。また、脳活動の一つの指標とされている酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化を計測する技術として機能的近赤外線分光法(fNIRS)を使用した。結果として、有意差はなかったものの患者の観察時において、熟練看護師の方が新人看護師よりも前頭葉の脳活動が高いにもかかわらず短い時間をかける傾向にあった。熟練看護師と新人看護師で脳活動に差がある可能性が示唆されたものの、サンプル数が少なく、体験の他の要因が判断に寄与した可能性が限界として挙げられた。 そこで、研究者はさらに詳細な脳活動を調べるためfNIRSより空間分解能で勝る磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて仮想環境下で多重課題対応中の看護師の神経活動と臨床経験の関係を明らかにする研究②を実施中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者はまず研究①として、仮想環境下における多重課題時の熟練看護師と新人看護師の前頭葉の脳血流量の変化に関する探索的な検証を行なった。研究デザインは観察研究で、熟練看護師(病院勤務経験10年以上)と新人看護師(2年未満)を対象に行われた。測定項目は基本属性、fNIRS値(左、右)、VRスコア、VR時間、そしてアプリのユーザビリティスコアであった。統計解析として熟練看護師と新人看護師のレスト状態からのNIRS測定変化量、VRスコア、VR時間、そしてユーザビリティスコアを比較した。 さらに現在、詳細な脳活動を調べるためfNIRSより空間分解能で勝る磁気共鳴機能画像法(fMRI)を用いて仮想環境下で多重課題対応中の看護師の神経活動と臨床経験の関係を明らかにする研究②を実施中である。研究デザインは観察研究で、熟練看護師(病院勤務経験5年以上)と看護学生(4年生)を対象に2023年9月から2023年11月の期間で行われた。測定項目は基本属性、fMRI値、fNIRS値(左、右)、VRスコア、VR時間、そしてアプリのユーザビリティスコアであった。
|
今後の研究の推進方策 |
研究者は今年度、研究②の解析とともに論文の執筆を実施予定である。統計解析として、熟練看護師と新人看護師のfMRI Blood Oxygenation Level Dependent Response (BOLD)信号、レスト状態からのNIRS測定変化量、VRスコア、VR時間、そしてユーザビリティを比較する。また、本研究の成果は、学会・学術誌にて公表予定である。
|