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偏光を用いた種内コミュニケーションの実証:頭足類の求愛行動から迫る

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0487
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分45040:生態学および環境学関連
研究機関東京大学

研究代表者

中山 新  東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワード行動生態 / 繁殖生態 / 偏光 / 頭足類 / エゾハリイカ
研究開始時の研究の概要

偏光とは光の電場振動の偏りを指す光の性質である。本研究では、光の偏光状態を識別できるイカ類の中でも、雄が長く発達した性的二型腕を持つエゾハリイカを用いて、繁殖コミュニケーションにおける偏光の重要性を行動と形態の両観点から明らかにする。この性的二型腕は求愛ディスプレイの際に特徴的な偏光反射を示すため、その視覚効果や求愛行動の偏光反射への最適化を明らかにするとともに、性的二型腕の表皮を電子顕微鏡で観察し、内在する偏光反射組織の分布特性を通常の腕と比較することで、視認性の高い偏光反射への形態的な適応を明らかにする。

研究実績の概要

青森県浅虫水族館の協力のもと、エゾハリイカの成熟個体をサンプリングし、飼育行動観察を行なった。行動観察により、本種の求愛行動を詳細に記載し、本種雄が、著しく伸長した性的二型腕を用いた求愛ディスプレイを行うことを明らかにした。これを踏まえ、エゾハリイカの雄による求愛ディスプレイを偏光カメラで撮影し、ディスプレイの際に性的二型腕に表出する偏光パターンを定量した。その結果、性的二型腕は、強く偏光した光を反射し、さらに、場所によって反射光の偏光角度が水平方向付近と垂直方向付近に大きく分かれることが明らかになった。この複雑な偏光角度のパターンについて、無脊椎動物の偏光視をモデル化した指標により、視認性の評価を行なった。これにより、性的二型腕で示される偏光パターンが、通常の腕の偏光パターンと比較して、頭足類の偏光視にとって強い視認性をもたらすことを示した。次に、行動観察で明らかになった複雑な偏光角度のパターンの至近的メカニズムを解明するため、性的二型腕の切片を作成し、光学顕微鏡・透過電子顕微鏡(TEM)による微細構造観察を行なった。その結果、偏光反射を生み出す虹色素胞の形態、分布量、および分布パターンが性的二型腕と通常の腕で大きく異なることが明らかになった。また、通常の腕では虹色素胞の光反射性プレート構造の配置角度は細胞間で異なるのに対し、性的二型腕では配置角度が細胞間で統一されていた。これらの形態的特徴は、腕で光を反射する方向の統一性や反射光の偏光特性に大きく関わると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、求愛ディスプレイにおける特殊な偏光パターンとその視認性を明らかにするとともに、電子顕微鏡を用いた詳細な形態解析を実施することにより、性的二型腕による光反射特性の至近的要因について多くの知見を得ることができた。また、これらの結果について博士論文をまとめ、エゾハリイカの求愛行動に関する学術論文を出版した。

今後の研究の推進方策

性的二型腕における虹色素胞の形態と分布パターンから、虹色素胞以外の体組織も偏光パターンの生成に関わっていることが示唆されたため、体組織が光の偏光状態に及ぼす影響を光学的実験により明らかにし、性的二型腕特有の偏光パターン生成の至近的メカニズムを解明する。また、性的二型腕の虹色素胞の配置角度に基づいて、エゾハリイカの求愛ディスプレイが、反射光の偏光度を最大化するような適応を示すかを、行動実験により検証する。また、エゾハリイカ以外の近縁種についても、性的二型形質の虹色素胞の形態・分布特性の調査を行う予定である。これらのデータをまとめて学術論文を出版する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Ritualized ink use during visual courtship display by males of the sexually dimorphic cuttlefish <i>Sepia andreana</i>2024

    • 著者名/発表者名
      Nakayama Arata、Momoi Shunsuke、Sato Noriyosi、Kawamura Tomohiko、Iwata Yoko
    • 雑誌名

      Ecology and Evolution

      巻: 14 号: 2

    • DOI

      10.1002/ece3.10852

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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