研究課題/領域番号 |
23KJ0493
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分22020:構造工学および地震工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大鳥 弘雅 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 数値流体解析 / バージ型浮体 / 抗力 / 動揺解析 / 浮体式洋上風力発電 |
研究開始時の研究の概要 |
流体の基礎方程式の乱流拡散項は強い非線形性を持つため、計算機のみの求解には限界があり、離散化誤差が生じる。本研究では、浮体式洋上風車用浮体に作用する流体力の高精度かつ低コストな予測を実現するため、深層学習による渦の特徴量の抽出により、数値流体解析の計算格子より小さい乱流渦を補間し、計算を高速化する。 また、風車の回転が浮体の動揺と連成してピッチ方向に負減衰が生じ、不安定動揺が励起される問題が知られている。本研究では、風車・浮体・係留を扱う数値流体解析フレームワークを開発するとともに、評価関数に組み込んで風車回転数と風車のブレード角を最適制御する荷重低減手法を開発する。
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研究実績の概要 |
浮体式洋上風力発電の低コスト化に向けて、動揺予測の高度化が必要である。特に低コストが期待されるバージ型浮体は、四角形部材で構成され、薄いスカートを持つため、抗力の評価が重要となる。バージ型浮体について、流体力と動揺の予測を高度化することが不可欠である。本研究では、数値流体解析を用いた「数値水槽」を開発し、流体力と浮体動揺の高精度な予測を実現する。
2023年度は、バージ型浮体について、数値水槽を開発し、流体力と浮体動揺の高精度予測を実現した。開発した数値水槽を用いてバージ型浮体の流体力係数を予測し、KC数と加振周期を変数とする新しい抗力係数モデルを提案した。提案した抗力係数モデルを用いて浮体の動揺解析を行った結果、従来のモデルにおいて問題であった、大波高条件でのサージ応答平均値の過小評価、ならびにヒーブ・ピッチ方向の共振周波数における動揺振幅の過大評価が解消し、水槽実験の結果と良く一致することを示した。本成果は、Ocean Engineering誌に掲載された(Otori et al., 2023) さらに、開発した数値水槽を用いて、浮体の波中の動揺解析を行い、その予測値に基づいて浮体設計に用いられる工学モデルを改善した。本成果について、Ocean Engineering誌に投稿した。
2024年度は、研究計画に従い、最適制御理論を利用した風車・浮体・係留の荷重低減手法の開発に取り組む。すでに2023年度中に、水槽試験を三井造船昭島研究所の実験施設を用いて実施し、検証可能な環境を整えた。また、工学モデル(Orcaflex)にて浮体と風車モデルの連成解析を構築した。これらの成果を踏まえ、今年度風車モデルを数値水槽に実装することにより、浮体―係留―風車の連成解析手法を開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は、当初の計画通り、数値水槽を開発し、バージ型浮体の流体力と浮体動揺の高精度予測を実現した。実用的な計算資源・計算時間にて、水槽実験とよく一致した流体力と動揺の予測精度を得た。ここまで、順調な研究の進展を得ている。 「(1)当初の計画以上に進展している。」との自己評価とした理由は、2024年度の研究計画の一部を、前倒しにて、2023年度中に達成したためである。2024年度は、最適制御理論を利用した風車・浮体・係留の荷重低減手法の開発に取り組む。風車の空力・制御モデルを、これまでに開発した浮体-係留系の動揺を予測する数値水槽に統合し、風車-浮体-係留系の連成解析を完成させる。すでに2023年度中に、風車モデルを取り付けた浮体の水槽実験を実施し、検証可能な環境を整えた。また、工学モデルにて浮体と風車モデルの連成解析を構築した。これらの成果を踏まえ、2024年度は、風車モデルを数値水槽に実装することにより、浮体―係留―風車の連成解析手法を開発する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、これまでに開発した数値水槽に、風車の空力モデル(ALM)を実装することにより、「数値風洞水槽」を開発する。従来の数値水槽では風を生成することができないため、気相部分で定常・非定常の風速場を生成できるように改良する。この数値風洞水槽の検証には、風車モデルを設置した水槽実験を使用する。水槽実験はすでに前倒しで2023年度に実施しており、風有り・無しのそれぞれの条件において検証が可能な環境を整えている。 続いて、浮体の動揺を低減するためのトルク制御手法を風車モデルに実装し、その動揺低減効果を数値風洞水槽を用いて検証する。
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