研究課題/領域番号 |
23KJ0495
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國吉 優太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 古気候モデリング / 氷期 / 気候変動 / 海洋深層水循環 |
研究開始時の研究の概要 |
過去100万年間の気候は、数万年スケールの北半球氷床の拡大-縮小と、数千年スケールの急激な気候変動を繰り返し、人類の移動や文明の盛衰に大きな影響を与えてきた。数千年スケールの気候変動は、グローバルな海洋深層水循環の強さが急激に変化することに起因していると考えられている。しかし、その海洋循環の変化の要因が氷床融解水の流出によるのか、大気海洋系の内部変動の一種なのか長年議論が続いており、気候システムの本質的理解の鍵となっている。本研究では、数値気候モデルシミュレーションによって、海洋循環の強さが急激に変化してきたメカニズムや、北半球氷床分布の変化と海洋循環の変化の相互作用の解明に取り組む。
|
研究実績の概要 |
氷期の間には、北半球全域で急激な温暖化/寒冷化と海洋深層循環(大西洋子午面循環AMOC)の急激な変動を伴う大気海洋変動(Dansgaard-Oeschger Event、以下DOE)が数千年周期で繰り返していた。本研究では、その変動を駆動するメカニズムを明らかにするための課題(1)と、DOEが頻発した時期に北半球高緯度に分布していた北半球氷床地形が数千年周期に及ぼす影響を系統的に明らかにするための課題(2)を実施した。 課題(1)では、大気海洋結合モデルMIROC4mを用いて、大気-海洋間の相互作用の一部のプロセスを仮想的に非結合にする数値実験(大気海洋間の水フラックスと風応力をそれぞれ一定値に固定する実験)を実行し、各相互作用がDOEを駆動させる主要因として働いているのかを調べた。実験の結果、大気-水循環の変動に伴う海洋表層塩分の変動が無い条件や、海面に与えられる風応力が一定の条件でも、DOEのような数千年周期の変動が発生することを示した。つまり、数千年周期の変動が、水フラックスや風の変化とは異なる要素で駆動されていることが分かった。 課題(2)では、氷期中盤の氷床分布(広さ2種類×高度6種類)の計12種類の各氷床分布の条件下でMIROC4mによる数値気候シミュレーションを実行した。実験の結果、氷床高度ピークが2000mから4000mの間のケースではAMOCが振動する一方、高度4000mを超えるとAMOCの強いモード、高度2000m以下ではAMOCの弱いモードが持続しやすいことを示した。また、氷床の広さに関しては大きい面積のほうが変動の周期が短くなることも分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画立案時の意図通りに、大気海洋結合モデルの大気海洋間のフラックス交換の一部を固定する実験や、氷床地形を変更する実験を支障なく実行でき、DOEのメカニズムや大気-海洋-氷床相互作用の解明に向けて一定の進展が得られた。数値実験を同時並行的に多数行っており、詳細な解析までには至っていない実験データもあるため、次年度にデータの詳細な解析を進めていく。また、風応力、水フラックス固定実験の結果を踏まえ、次のステップとして熱フラックスを固定する計画を新たに立案した。モデル内部の複雑さから今年度中にはその実験実行が間に合わなかったが、テスト実験を経て準備が整いつつあるため、次年度の初旬には実行に移せる目処が立っている。以上のことから、現在までの進捗は、概ね順調に進展している状況にある。
|
今後の研究の推進方策 |
DOEのメカニズム理解の進展のためには、大気海洋間の熱フラックスの役割を明確にする必要があるため、今後、大気海洋結合モデルの中で海洋に受け渡される海面熱フラックスを仮想的に一定値に置き換える実験を実行する計画である。本計画では、これまでの風応力一定、水フラックス一定実験での手法に準拠して、熱フラックスの固定を行う。また、風応力、水フラックス、熱フラックスの各ロセスを仮想的に非結合にしたことで、海洋内部に及ぶ影響(水塊性質や海洋循環強度の変化)や、深層水沈み込み域付近の大気-海氷-海洋間の相互作用プロセスがどのような変調を受けているかを詳細に解析していく。さらに、DOEに対する氷床地形影響については、地表気温の変化による熱的効果と表層風変化による力学的効果の両方に着目して、実験データの気候変数を詳細に解析していく。加えて、熱的効果と力学的効果を切り分けるために一方の効果のみを固定するような感度実験(e.g., 風応力のみ氷床高度が異なる実験の場合の値に差し替える実験)を追加する方策である。
|