研究課題/領域番号 |
23KJ0501
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
寺崎 友規 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / 超伝導 / マイクロ波 / ミリ波望遠鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
インフレーション宇宙論は、宇宙誕生直後に指数関数的な宇宙膨張が起きたとする理論であり、従来の宇宙論の枠組みにおける未解決問題を一挙に解決できる。インフレーション時に発生する原始重力波は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に対してBモードという特殊な偏光パターンを刻印すると予言されており、このBモードの発見は物理学における最重要課題の一つである。本研究では史上最大数の超伝導検出器を用いることによって統計感度を向上させるとともに、新たな時系列解析手法により系統誤差を低減する。これによりこれまでで最高感度でのインフレーション探索を達成する。
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研究実績の概要 |
申請者は、宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background: CMB) 偏光観測実験Simons Observatoryに参加している。2023年度上半期には、チリ共和国アタカマ砂漠にある観測所に赴き、Simons Observatoryの望遠鏡群のうち、最初の小口径望遠鏡であるSAT-MF1の初観測に向けた作業を行った。滞在時は、望遠鏡のレシーバーを望遠鏡の傍の倉庫内に配置し、そこでレシーバーの冷却テスト及び、検出器の動作チェックを行った。申請者は、主に望遠鏡の検出器および読み出し装置の設定や、測定機器のネットワークのハードウェア/ソフトウェアの設定、検出器データの解析などに従事し、初観測にむけて大きく貢献した。初観測を達成した10月以降は、主に小口径望遠鏡の較正と、系統誤差の解析を行っている。申請者は、検出器の指向方向の較正や、偏光変調器を用いた大気ノイズの除去及びそれに起因する系統誤差の除去、時系列データ解析パイプラインを担当している。これまでに取得されたデータから、既に銀河系面からの偏光信号を検出しており、CMBの検出まであと一歩の段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2台の小口径望遠鏡が観測を開始しており、測定が進んでいる。望遠鏡の立ち上げ時には、予想よりも大きな望遠鏡へのローディングが確認された。その原因を解明するために、申請者は、望遠鏡の開口部に近い場所に、反射率の高い素材でバッフル(シャイニーバッフル)を作ることによって、ローディングの原因特定を図った。サイトにてシャイニー・バッフルを使ったローディングテストを行い、光学系の構成要素の一つに問題があることを発見した。現在はその光学要素を改良し、ローディングが改善している。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background: CMB) 偏光観測実験Simons Observatoryは、合計5年間の観測によって、初期宇宙に起こったとされる加速度的な宇宙膨張(=インフレーション)に起因するBモード偏光を検出することを最終的な目標としている。申請者は、その足掛かりとして2024年度に取得される数か月程度のデータによって、Bモードよりも大きな信号であるEモード偏光を検出する。そのために具体的には以下のことに取り組む。 [各種キャリブレーション] 2023年度にも行った望遠鏡のキャリブレーションを更に進め、科学解析に適用可能な精度でのキャリブレーションを実現する。特にSimons Observatoryが採用している半波長板を用いた偏光変調器によって生じる装置内の偽偏光(Instrumental Polarization)を精度よく測定し、それによる系統誤差の影響を最小限に抑える。[データセレクション] 高い感度を達成するためには、天気が悪い日や、うまく動作していない検出器を取り除くことによって、ノイズを多く含んだ観測を解析から落とすことが肝要である。申請者はデータセレクションを行うためのパイプラインコードを開発する。 [科学解析] 作成したCMBのマップを、球面調和展開し、Eモード偏光を検出する。場合によっては、プランク衛星等の先行実験との相関をとることで実効的な感度を向上させる。 [解析のバリデーション] 科学観測の結果が系統誤差によってバイアスされていないかどうかを確認する。確認する際には、データを二つに分割して差をとる「ヌルテスト」を行う。
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