研究課題/領域番号 |
23KJ0540
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
及川 瑞稀 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | テンソル圏 / 群作用 / モジュラー不変量 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、物理学に対して数学的にアプローチすることで、数学的に面白い関数を多数構成することを目的としている。より具体的には、私の今までの研究で用いた数学的な方法により、モジュラー変換という変換のもとで不変な関数を構成することができるのではないか、さらに、ある種の関数は全てこの方法で作れるのではないか、ということを示すことが課題である。最終的には、この方法で作られる関数にどんなものがあるかをすべて具体的に書き出すという、いわゆる分類問題を解決することを目標としている。
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研究実績の概要 |
組紐テンソル圏とは積構造および積の左右を入れ替える構造(組紐)を持った圏であり、有限群の表現のなす圏を一般化した概念である。カイラル共形場理論と呼ばれる場の量子論のクラスは、ある種の量子的な代数により数学的に定式化され、とくに有理共形場理論という良いクラスでは、その表現圏に相当する圏がテンソル圏となることが知られている。このテンソル圏を調べることは重要であり、たとえば、有理共形場理論の2次元場の量子論への拡大の分配函数として、複素上半平面上の整数係数一次分数変換(モジュラー変換)で不変な函数が得られることが知られており、A1型アフィンLie環という無限次元Lie環から得られるものがADE Dynkin図形というグラフで分類されることが有名だが、これはα-誘導というテンソル圏的な操作で説明される。 有理共形場理論に有限群作用があるとき、表現の同変版である捻れ表現のなす圏が固定点理論の表現圏を復元することが知られている。捻れ表現の圏は組紐の同変版である群組紐を持っており、この設定でα-誘導の同変版を定義できることが知られている。 本年度の研究では、同変α-誘導を用いて有理共形場理論への有限群作用に対する固定点理論の2次元拡大を与える方法を示し、それがモジュラー不変となるための必要十分条件を定式化した。本研究は、捻れ表現から固定点理論のモジュラー不変量が得られることを示すものであり、有用である。 また、関連して、接合テンソル圏という整合した群作用と次数付けを持つテンソル圏のクラスに対してその接合中心の概念を導入し、それが群の整合対に対する組紐という構造を持つことを示した。群の整合対に対する組紐は、群組紐をさらに一般化した概念であり、まだ例がそこまで多く知られていないため、本研究で一般的な構成を与えたことは重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、本研究では同変α-誘導により固定点理論のモジュラー不変量を与える方法を示した。この点については当初の計画通りである。一方、接合中心の導入は当初の計画になかった成果である。 以上の通り、計画通りに進んでいる研究に加え、計画になかった新しい成果も得られたため、本研究は当初の計画以上に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、申請計画の通り、A1型と呼ばれるアフィンLie環から得られるモジュラー不変量の分類に取り組む予定である。
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