研究課題/領域番号 |
23KJ0548
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分60070:情報セキュリティ関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 リウヤ 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 暗号理論 / 偽造不可能性 / 匿名性 / 証明可能安全性 |
研究開始時の研究の概要 |
サイバーフィジカルシステム(CPS)とは、実世界にて収集された多様なデータをサイバー空間にて解析を行うことで産業の活性化や社会問題の解決を図るものである。CPSの活用が広がる一方、既存の情報セキュリティ技術がサイバーとフィジカルのつながる境界において機能しない可能性が指摘されている。これを解決するためには、物理空間まで包括したCPS全体としての情報セキュリティ技術が必要となる。
本研究では、情報セキュリティ技術の基礎を担う暗号技術を対象とし、物理空間に適応可能な理論基盤の構築、および実証実験を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、物理的なモノを扱うことができる暗号技術の実現である。その一歩として、モノが偽造されていないことを保証する「モノの電子署名」技術の理論的な改良を行った。具体的には以下の通りである。以前の安全性定義を再検討すると、物理空間で直接動作可能な攻撃者に対する安全性ゲームを考えていた。このような攻撃者は既存の暗号技術では考慮しておらず、これでは数多ある既存の暗号技術の知見を応用できない。そこで、攻撃者は計算機で実行可能な処理のみが行えるものとし、その上で物理空間での動作を記述したオラクルにビット列のみを介してアクセスできるように定義を改良した。これにより、研究計画に示した通り従来の枠組みを壊すことなく物理的な動作を記述できることとなった。以上の基盤理論の改良を行ったのち、改めて「モノの電子署名」技術を再構築した。この成果は暗号分野のトップ国際会議の一つであるFC2023に採択されている。 さらに、モノを扱う具体的なシステムとして商品の売買・輸送を行うECサイトに着目し、以下の研究成果を得た。現存のECサイトではレビューから購入者が特定できる可能性がある。この問題への対策として提案された匿名評価システムは、匿名で署名生成ができるグループ署名技術を元にしており、この技術を用いることで自然に匿名性が担保されると信じられていたが、本研究で匿名性を破る攻撃を発見した。そこで、真に望ましい匿名性の新たな定義を与え、様々な暗号技術を組み合わせた方式の一般的構成法を与えた。この成果も同様に暗号分野のトップ国際会議の一つであるFC2024に採択されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、本研究の基盤を成すモノを扱える暗号技術の理論構築に関して一定の成果を得られており、同成果が査読付き国際会議に採択されている。また、研究計画で述べたモノを扱えるマルチパーティ計算方式の構築は未だ結果が得られていないが、発想を変えてモノを扱うシステムであるECサイトに着目し、システムの安全性解析を行うことで新たな研究課題を発見し成果が得られた。以上から、本研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画に沿って、モノを扱えるマルチパーティ計算方式の構築に着手する。これまではモノを扱える暗号技術の理論基盤構築とそれを用いてモノの真正性を保証する技術の構築を行ってきたが、三者以上存在するプロトコルにおいて構築した理論基盤が適用できるのかは明らかでない。今まではあらゆる暗号技術に対してモノを扱えるように直接拡張する手法を検討してきたが思うように成果が得られなかったため、次年度は、まずは三者存在する比較的単純で具体的なプロトコルを考え、それがモノを扱えるように拡張する手法を検討する。また、並行してモノを扱うシステムにも今年度と同様に着目し研究を進める。これによりモノを扱うシステム特有の課題について知見を深め、本研究に還元したい。
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