研究課題/領域番号 |
23KJ0558
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
萩野 勝己 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | セントラルドグマ / 試験管内再構成 / 自己再生産 / DNA複製 / エネルギー生産 / 人工細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
現存する生物は、低分子化合物の同化を介して自らの細胞を増やす事ができる。この稀有な能力のために、生物は古くから有用物質の生産に利用されているが、制御性や安定性には常に制限がつき まとう。もし、人工的にこのような増えるシステムを構築する事ができれば、高い制御性を持った次世代の物質生産場となる。本研究では、この増える分子システムを構築するための基盤となる転写・翻訳因子37種を自己再生産しながらDNA複製が持続する人工セントラルドグマの試験管内再構成を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、自律的に自己複製可能な人工細胞の構築に向けた、遺伝子発現に関わる37遺伝子を自己再生産する人工セントラルドグマの試験管内再構成を目的とする。 まず、今年度は37遺伝子のうち20種を占めるアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)の再生産とその遺伝子を持つDNAの複製を共役したシステムの構築を行なった。当初は、無細胞翻訳系(PURE system)の活性等の問題により10種のaaRSまでの再生産にとどまっていた。しかし、「透析反応系」や「遺伝子配列の改善」、「遺伝子コピー数の調整」などの工夫を施す事で20種類のaaRSを再生産しながら4世代までDNA複製を持続するシステムの構築に成功した。しかし、この系はDNA複製は持続したが、翻訳活性が低下してしまうという問題を抱えていた。そこで、より安定的な再生産を目指し、20種のaaRSの活性や翻訳量の詳細な解析を行った。そして、その結果からさらなる遺伝子配列や反応系の改変を行いさらなる調整を行なった。現在、この結果をもとに安定的な再生産系を構築中である。 次に、PURE systemに含まれるエネルギー再生系の代替システムとして、二酸化炭素固定酵素であるRuBisCOの発現を介したATP合成系の構築を試みた。その結果、無細胞翻訳系を用いた活性を持ったRuBisCOの発現に成功し、その他の酵素と組み合わせることでATPを合成する系の構築に成功した。また、この生産したATPをPURE system内の翻訳反応のエネルギーとして用いることにも成功した。 最後に、PURE systemそのものの単純化を行なった。その結果、PURE system内に含まれるタンパク質のうち一部は遺伝子発現において必須ではないことを見出した。この結果により、当初の計画よりも単純な仕組みで自己複製可能なシステムを構築できる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画である約半数の遺伝子の自己再生産系の構築に関しては達成しており、より安定的なものに拡張するための問題点の把握・対処についても完了してる。さらに、次年度に行う予定だったaaRS以外の遺伝子に関しても活性検出が完了し、さらに必須性の検証により系の単純化を行なった。また、エネルギー生産系の代替案としてRuBisCOを用いたATP生産系の構築も完了している。上記の結果より、当初の計画よりも進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に定量・改善したaaRSを用いてより安定的なaaRS 20種の再生産系の構築を完了させる。そして、単純化したPURE systemの結果から、遺伝子発現に必須である因子から順番に同様の手法を用いて再生産系に追加していく。そして、この系をさらに調整・拡張していく事で遺伝子発現に必須な遺伝子を全て再生産できる系の構築を目指す。
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