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包摂を志向したメタ議論教育研究:トゥールミンの「議論の場」概念に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0591
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分09010:教育学関連
研究機関東京大学

研究代表者

久島 玲  東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワード議論教育 / トゥールミン / 議論の場 / 三角ロジック / メタ議論
研究開始時の研究の概要

本研究は、異なる基準を持つ多様な人々の合意形成の手段として議論が真価を発揮する条件と、そうした議論の実現を可能にする教育の在り方を、理論と実践の両面から探究する。
日本の教育実践では、「三角ロジック」等の議論モデルが、教科書にも掲載されるほど広く普及している。本研究は、このモデルの考案者であるトゥールミンの思想に、「議論の場」という概念を切り口として踏み込む。これにより、モデルを万能ツールのように扱う画一的な実践から、多様性とその包摂を志向した議論教育実践へ向かうことを目指す。
加えて本研究は、異なる社会文化背景の(≒議論の場が異なる)人々が参加する議論教育に実際に参与し、実践への還元も志向する。

研究実績の概要

1年目の活動は、(1)メタ議論の研究、(2)「議論の場」概念の理論研究、(3)異なる「議論の場」の他者間の議論実践研究、の3つに大別することができる。
(1)メタ議論の研究: 「議論の場」の複数性の強調は相対主義的な帰結を招くとの批判がある。これを乗り越えるべく、メタ的な基準の成立を問う先行研究としてメタ倫理学の文献を渉猟し、文脈主義の考え方に着目して検討を進めた。暫定的な成果を2024年5月のOSSA(Ontario Society for Study of Argumentation)にて発表予定である(採択済)。
(2)「議論の場」概念の研究: 主に2点の進展があった。第一に、日本における三角ロジックの普及と、それに伴う「議論の場」概念の背景化について、過程の整理と問題の指摘を行ったことである。この成果を、2023年7月にオランダで開かれたISSA(International Society for Study of Argumentation)で発表した。第二に、トゥールミンにおける「議論の場」概念の探究を進めたことである。教育学との接続を念頭に、トゥールミンが大学教科書として執筆した An Introduction to Reasoning の精読を中心に据えて、現在の日本の議論教育の課題と可能性を検討した。
(3)異なる「議論の場」の他者間の議論実践: 2024年1月から3月にかけ、台湾陽明交通大学の上條純恵氏が主宰する、日本語ディベート学習を通じた日本と台湾の大学生の国際交流プログラムにて、実践参与的な研究を行った。異なる「議論の場」に属する他者同士がより円滑に議論を進めるための方法を検討し、その成果を3月のディベート教育国際研究会にて報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上述の3つの活動のうち、最も多くの時間を費やしたのは(2)である。これまで日本ではほとんど触れられてこなかった未邦訳文献 An Introduction to Reasoning を「議論の場」概念の観点から分析し、さらに現行の教育実践との接続を検討したことは、本研究に一定の進展を見たと言える。
ただ、第一に、この An Introduction to Reasoning の検討は、研究計画にはじめから含まれていたものではなかった。当初は、トゥールミンの後期著作を主な対象として、「議論の場」概念の変遷を追う予定であった。しかし、その前段階として中期著作の An Introduction to Reasoning を検討することは、「議論の場」の理論と議論モデルの実践を結び付けて考える点、そしてトゥールミンの教育学的関心を確認する点において、避けては通れない作業であった。結果として、当初の研究計画からすれば、新たに発生した内容となっている。また、第二に、本研究の成果はすでに一定の原稿化が済んでいるものの、未だ論文としての公表に至っていない。
以上の事情を総合して、第1年次の達成度は「3:やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

まずは、上述の成果を論文として公にすることを急ぐ。そのうえで、第2年次では、①トゥールミンの後期著作と、②「議論の場」に関する後続の研究を中心とした分析を進める。
①トゥールミンの後期著作では、トゥールミンの思想の変遷がよく表れるが、議論モデルや「議論の場」への言及が初期著作に比べて少なくなっていることから、「三角ロジック」をはじめとした議論モデルによって先行する実践的な関心からは見落とされてしまうことが少なくない。本研究は、後期著作を分析の射程に含めることで、従来あまり検討されてこなかった この理論部分の検討を進める。加えて、南カリフォルニア大学に保管されているトゥールミンの史料を渉猟し、日本では入手困難な草稿や書簡も含めての分析を試みる予定である。
②また、「議論の場」概念には、トゥールミン自身が十分な定義を与えていなかったことから、後続の研究によって様々な補完と発展の試みが為されている。当初の研究計画のとおり、The Journal of the American Forensic Association の1981年の特集などを中心に、近年にいたるまでの「議論の場」研究の整理を進める。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [学会発表] 日本語ディベートプログラムの実践と成果:台湾の取り組み2024

    • 著者名/発表者名
      上條純恵、久島玲、川下大響、趙唐
    • 学会等名
      第10回 ディベート教育国際研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Reconsidering Toulmin Model in Education: with Argument Fields and Pedagogy.2024

    • 著者名/発表者名
      Ryo HISAJIMA
    • 学会等名
      13th Conference of the OSSA(Ontario Society for Study of Argumentation)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] How and Why Toulmin’s Model became Triangular: (Over-)Simplification in Japan.2023

    • 著者名/発表者名
      Ryo HISAJIMA
    • 学会等名
      10th Conference of the ISSA(International Society for Study of Argumentation)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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