研究課題/領域番号 |
23KJ0596
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 芳樹 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 薬剤誘導性消化器毒性 / crypt / 小腸スフェロイド / 下痢 / 悪心・嘔吐 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、動物/ヒト消化管幹細胞培養系を用いて、医薬品の最も主要な有害事象のひとつである消化器毒性のリスクを評価可能なin vitro実験系を構築し、消化器毒性の包括的理解ならびに定量的リスク予測を行う。消化器毒性を発症するメカニズムは多岐に渡るため、(1)殺細胞性傷害の評価に加えて、(2)上皮バリア機能、(3)ムチン防御層、(4)イオンバランス、(5)セロトニン動態の変動を評価可能な実験系を整備する。そして各種毒性評価指標をスコアリングすることで、従来消化器毒性と一括りにされてきた副作用を発症機序別に定量的予測が可能な評価セットを構築する。
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研究実績の概要 |
ヒトcrypt由来の小腸スフェロイド培養系を用いた、薬剤誘導性消化器毒性の評価系の構築に取り組み、消化器毒性を誘発しうる個々の機序に根差した評価系構築を行った。今年度は、(1)未分化細胞と分化細胞に対する細胞毒性を評価する実験系、(2)小腸スフェロイドをenterochromaffin (EC)細胞へと分化誘導し、セロトニン放出活性を指標に薬剤誘導性の悪心・嘔吐を予測可能な評価系構築に取り組んだ。 (1)では、下痢の発症が臨床上問題となるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の毒性評価を行った。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬は薬物の種類に応じて下痢のリスクの高低が大きく異なることが知られるが、未分化細胞に対するATP量の減少を指標に、下痢のリスクの高低を識別可能になることが明らかとなり、こうした毒性が各薬物のEGFRに対する阻害モードの違いに起因することを明らかとした。また、分化を誘導した細胞では未分化状態に比べて毒性感受性が大幅に低下し、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が未分化細胞に対して選択的な毒性を発揮しうることが示唆された。 (2)では、薬剤誘導性の嘔吐の要因の一つとして、小腸上皮のEC細胞から過剰にセロトニンが分泌される機序に着目した。Notchシグナルの遮断により小腸スフェロイドをEC細胞へと分化誘導し、薬物刺激による培養上清中へのセロトニン分泌を評価可能な実験系を構築した。ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害薬やJAK阻害薬はそれぞれ同種同効の薬の中でも、薬物の種類に応じて嘔吐のリスクが大きく異なることが知られるが、セロトニン放出活性を指標に嘔吐のリスクの大小を定性的に識別可能になることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトcrypt由来の小腸細胞を用いて、未分化細胞・分化細胞に対する細胞傷害性や5-HT放出活性を評価可能な実験系を構築し、消化管障害の原因となりうる複数の機序に根差した実験系の構築が進んでいることや、それぞれの評価系を用いて臨床の副作用リスクと相関する毒性が分子標的薬を中心に観察可能であることを見出すことに成功したことから、概ね計画通りの進捗であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上皮バリア機能の変動やムチン層の崩壊を原因とする消化管障害を評価可能な実験系を構築し評価指標を拡充していくとともに、複数のin vitro試験結果から臨床における消化器毒性リスクを予測する外挿手法を最適化する。また、オフターゲットな5-HT放出活性が観察されている薬物に対し、消化器毒性を引き起こす分子論的なメカニズムの探索を実施する。
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