研究課題/領域番号 |
23KJ0598
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 裕貴 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ライフコース / 結婚 / 離婚 / 所得不平等 / パネル調査データ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではパネル調査データおよび公的統計データの計量分析を通じて,1990年代以降の女性のライフコースの変化とその社会経済的格差が世帯間所得不平等に及ぼす影響を実証的に明らかにする.ライフコースの中でも特に結婚,結婚後の就業,離婚の3要素に着目し,これらミクロな家族形成過程の変容が低稼得力層の未婚化・単身化ならびに高稼得力層の共働き化を通じてマクロな世帯間所得不平等にいかにつながるかを検討する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,女性のライフコース(結婚・就業・離婚)の変化とその階層差が世帯間所得不平等に及ぼす影響を実証的に明らかにし,ミクロな家族形成過程に着目した世帯間不平等生成メカニズムの説明枠組みを構築することである.今年度は家族形成過程のうち結婚と離婚に着目した研究を主に進めた. 結婚については,1980年代以降の結婚行動の変化がいかに若年壮年層における世帯間所得不平等の拡大に寄与したかを要因分解の枠組みで分析した.分析の結果,女性の等価世帯所得に対する結婚の効果は低所得層ほど正の方向に大きく,結婚は格差を縮小する効果があることが明らかになった.それゆえ,近年の結婚行動の変化は主として構成効果(未婚者割合の増加)を通じて世帯間所得不平等の拡大に寄与したことが示された. 離婚については規定要因と帰結の分析を行った.まず規定要因については,妻の雇用形態を統制したうえでの妻の絶対稼得の効果には結婚コーホート間で変化がみられ,1999年までに結婚したコーホートでは有意な効果はみられない一方,2000年以降に結婚したコーホートでは離婚リスクに対して負の効果がみられることを明らかにした. 一方,離婚の帰結としては,女性の等価世帯所得に対する離婚の負の効果は低所得層ほど大きいことを示した.その背景の一つには,低所得層ほど有配偶時の夫への経済的依存が大きく,離婚による夫所得の喪失の相対的な影響が大きいことがあった.所得再分配のバッファー効果は概して限定的であり,離別女性が経済状況を回復するのに有効な対処戦略は再婚と正規雇用就業に限られていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の着目する家族形成過程のうち結婚と離婚については,既に出版済みの結婚の規定要因に関する研究も含めて本年度までに規定要因と帰結に関する分析が完了した.一方,結婚・出産後の女性の就業については,夫所得別にみた妻の就業行動の差異とその時代変化について検討を行い国内学会で報告を行ったものの,そうした妻の就業行動のパターンや時代変化がいかに世帯間所得不平等につながっているかは十分に検討できていない.ただし,学会報告の際にえたフィードバックを踏まえて来年度以降に取り組む準備はできている.こうした状況を総合的に考慮すれば,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
結婚・出産後の女性の就業行動のパターンとその時代変化がいかに世帯間所得不平等に寄与したかについてパネル調査データや公的統計データを用いて分析を進める.あわせて,今年度分析を進めた研究のうち出版に至っていないものは論文にまとめ投稿する.さらに,実証分析の知見を基にしたまとめとして,女性の家族形成行動変容と世帯間所得不平等の拡大に関するミクロ・マクロ連関の理論図式を整理し,博士論文の執筆を進める.
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