研究課題/領域番号 |
23KJ0638
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小原 優吉 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ヘーゲル / 『精神現象学』 / 哲学方法論 / 歴史 / 哲学史 |
研究開始時の研究の概要 |
18・19世紀ドイツの哲学者G.W.F.ヘーゲルは、ドイツ観念論の思潮に立脚して、「哲学はいかにして学問として可能であるか」という問いに対する広範な議論を遺している。とりわけ彼が1807年に出版した『精神現象学』では、哲学体系そのものの呈示に先立って、それを可能にする知の地平を獲得するための道程が叙述されており、この書は哲学の方法論を考察するにあたって豊富な内容を有している。本研究は、『精神現象学』における哲学の方法についての議論を、ヘーゲルに先行するドイツ観念論哲学者との影響関係のもとで捉えなおすことを通じて合理的に再構成し、その現代的意義を評価する。
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研究実績の概要 |
本年度は、ヘーゲル『精神現象学』における哲学方法論の解明を行うにあたって、主に『精神現象学』の内在的解釈を通じてその叙述方法を再構成するとともに、カントやフィヒテといったヘーゲルに影響を与えた哲学者のテクストを参照することを通じてヘーゲルへと引き継がれる「哲学」と「歴史」の関係を巡る議論の射程を明らかにした。こうした研究活動を通じて、本年度は次の三つの成果を挙げた。 第一に、『精神現象学』を内在的に解釈することを通じて、ヘーゲルの哲学方法論の中核には「経験論」と「観念論」と呼ばれる二つの哲学的理論の宥和にあることを発見し、その論証過程を追跡した。この成果に基づいて現在二つの論文を執筆している。 第二に、このようなヘーゲルの哲学方法論上の発想についてその歴史的起源を解明するため、ヘーゲル以前の哲学者、とりわけカントとフィヒテの議論における哲学方法論の解明とその影響についての研究を進めた。この成果に関しては、次年度に研究発表を行う。 第三に、今年度の研究成果を次の三つの媒体で発表した。まず、東京大学倫理学研究室が発行する『倫理学紀要』において、『精神現象学』のとりわけ前半部分に焦点を当ててその論証方法を解明する論文を発表した。ついで、2022年度9月22日の国際会議“Natur und Leben bei Hegel”において発表された「ヘーゲルの法哲学」に関する報告について、今年度にその翻訳を行った(近日出版)。さらに、日本ヘーゲル学会が開催した「第三回フロンティア研究部会」においてワークショップを開催し、ヘーゲルの実践哲学についての現代の論争状況を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘーゲル『精神現象学』の内在的な解釈を進め、「観念論」と「経験論」という二つの哲学的系譜の抗争が同書の議論展開の中心にあることを発見した。その点で、『精神現象学』における哲学方法論の内実を解明するという課題を大きく進展させることができた。他方で、その成果の発表が予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を土台にして、次の研究活動を行う。第一に、『精神現象学』終盤のテクストを解釈し、これまで明らかにした同書の哲学方法論の特徴が同書全体を通じて貫徹されているかどうかを検証する。第二に、これまでに明らかにしたヘーゲルの哲学方法論をめぐる影響史の調査をより進め、さらには現代哲学における方法論との対比のもとでヘーゲルの時代の哲学方法論の意義を明らかにする。これらの研究活動を遂行する上で立脚点となるのは、ヘーゲルないしは同時代の哲学者たちは、「哲学をすること」が「歴史」と深く結びついていることを洞察し、この観点からそれぞれの方法論を練り上げていたということである。
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