研究課題/領域番号 |
23KJ0657
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 聡梧 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
700千円 (直接経費: 700千円)
2025年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
2024年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
2023年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
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キーワード | dynamical system / hyperbolicity / shadowing property |
研究開始時の研究の概要 |
数学の力学系という分野は、振り子の振動や惑星の軌道などの、時間経過とともに変化するシステムについて研究を行うものである。これらのような時間経過とともに変化するシステムの動きをすることができるかどうかを判定するために、システムの構造安定性というものを考えることが多いが、そのシステムが構造安定性を持っているのかどうかを判定するのは難しい。今回の研究では、システムが構造安定性を持っているかを判定する上で重要な役割を果たすshadowing propertyという性質についてより理解を深め、また最近研究されているshadowing propertyに関する未解決の予想の研究も進展させることを目指す。
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研究実績の概要 |
自分は双曲力学系の重要な概念である軌道追跡性を主に研究している。軌道追跡性とは、擬軌道(軌道を繋ぎ合わせたようなもの)がうまく軌道で近似できるという性質であり、構造安定性の必要十分条件を与えるなどさまざまな応用を持つ。自分の研究計画では、博士一年までに一般の多様体上でhyperbolicityを持つ力学系について、二種類の軌道追跡性と、それらが同値になる条件を調べることを目標としていた。2022年には閉曲面上でのフローの二種類の軌道追跡性が同値となる条件に関する論文を提出したが、今年度はそれが無事受理され、その論文に基づいて京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「力学系理論の展開と応用」で"Oriented and standard shadowing proper- ties on closed surfaces"というタイトルで発表を行った。 もう一つの方針として、hyperbolicityを持つ一般次元の力学系が軌道追跡性を持つ十分条件を研究した。その中で、transversalityを一般化することで、閉曲面上の離散力学系で軌道追跡性の十分条件を与えている論文を発見した。自分はさらにその条件をうまく一般化することで、一般次元の離散力学系が軌道追跡性を持つ十分条件を発見することができた。これは離散力学系に関する研究であるが、同様の条件は連続力学系についても考えることができる。そのように考えた場合、これは研究目的の一つであった、二種類の軌道追跡性が同値になる条件を見つけることにつながるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はフロー(連続力学系)のみについての研究だったが、現在は離散力学系についても扱っているなどの変更があったものの、力学系が軌道追跡性を持つ十分条件を発見することができた。これは研究目的の一つであった、二種類の軌道追跡性が同値になる条件を見つけることにつながるものである。また、研究の過程で、transversalityをうまく一般化することで当初想定していたよりも一般性の高い結果が成り立つことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の一つであった、二種類の軌道追跡性が同値になる条件を見つけることは、今回力学系が軌道追跡性を持つ十分条件を発見したことでかなり達成に近づいたと考えている。そのため、今回発見した条件が十分性だけでなく必要性を持つかを研究することで、二種類の軌道追跡性が同値になる条件を明らかにしたい。また、もう一つの研究目的として、multisingular hyperbolicityなどをもつ力学系における軌道追跡性を調べることがある。この研究目的を達成するために、multisingular hyperbolicityやそれに関連する論文を読み、知見を深める。
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