研究課題/領域番号 |
23KJ0667
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 木楠 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2025年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2024年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
|
キーワード | 不完備情報ゲーム / common belief |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、不完備情報ゲーム理論において、特にゲームのプレイヤーが真のモデルに関する正しい情報を持っていない時に、ゲームを繰り返してモデルに関する学習を進めていった結果、長期的に行動が収束するような条件を探究するというものである。 この収束に関する十分条件を求めることにより、様々な社会現象における人々の行動について長期的な予測を可能にすることが本研究の目的である。
|
研究実績の概要 |
当該年度は不完備情報ゲームについての分析として、ゲームのプレイヤーがコミュニケーションを取ることに対するメリットを分析した。具体的には未知の"真の状態"に依存するシグナルを受け取り、真の状態がなにであるかを学習するプレイヤーが二人いる状況において、二人が自身の持っている情報についてコミュニケーションを取る場合と取らない場合で、その後の協調的行動の成功確率がどのように変化するのかを分析した。直感的にはコミュニケーションを取る方がお互いの持っている情報が共有知識となり、協調が成功しやすくなると感じられるが、分析の結果、このことはゲームのプレイヤーが未知の状態に対する学習を行う期間が短い場合にのみ成立し、逆に期間が長い場合にはコミュニケーションを取らない方が協調的行動が発生しやすいという結果を得た。さらに、十分期間が長い場合にはコミュニケーションの有無が一切影響しなくなる場合が数多く存在することを指摘し、このためのほぼ必要十分な(情報構造についての)条件を導いた。現実の社会問題では、戦争や銀行の取りつけ騒ぎなど、協調的行動が重要である場面が多く存在する。本研究の結果は、ゲームの具体的構造に依らない一般的な結果であり、したがって上述したような様々な社会現象に対して応用が可能であると考えられ、場面によっては人々がコミュニケーションをわざととらないようにすることによって利益を高められる可能性があることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究は、ゲームのプレイヤーがモデルを勘違いしているという"misspecification"の問題ではないものの、もともと広く研究を行うと述べた"不完備情報ゲーム"における研究の一種である。この分野において、社会問題に広く応用できる可能性のある基礎的な結果を確立したという意味で、研究課題の遂行はおおむね順調であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究をより一般的な結果に広げるため、ゲームのプレイヤーが直面する情報構造についての二項順序をうまく定義し、コミュニケーションの有無だけでなくその度合いによってどれほど協調がおこる確率に変化を及ぼすのかの分析を行う予定である。また、ゲームのプレイヤーが真のゲーム構造を理解していないという"不完備情報ゲーム"における分析を引き続き広く行う。
|