研究課題/領域番号 |
23KJ0699
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分62040:エンタテインメントおよびゲーム情報学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東條 建治 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2025年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2024年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 形状最適化 / 微分可能レンダリング / 計算ファブリケーション |
研究開始時の研究の概要 |
デジタルな三次元形状を編集するための技術は、ストーリーテリングのほか、建築や家具、彫刻の製造など、幅広い応用がある。様々な三次元創作支援ツールが研究されてきたが、形状データを操作して思い通りの機能や見た目を実現することは、試行錯誤を必要とし容易でない。本研究では、コンピュータビジョン技術を応用し、写真などの二次元データをもとに、簡単に思い通りの三次元コンテンツを作成できるツールを開発する。具体的には、画像生成アルゴリズムの微分値を用いる微分レンダリングや、ニューラル場と呼ばれる勾配最適化に適した三次元表現を用いて、参考画像や指定された機能から自動で三次元形状を最適化する手法を検討する。
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研究実績の概要 |
本年度は2件の論文がピュータグラフィクス分野のトップ国際会議であるSIGGRAPHにおいて発表、または来年度に発表予定として受理された。 プロジェクト1:Stealth Shaper: Reflectivity Optimization as Surface Stylization (SIGGRAPH 2023) 鋭い角を持つ特異な形状様式を生み出すステルス・デザインの事例に着想を得た、反射特性の最適化手法を開発した。特に、こうしたデザインが、一目でそれとわかる特異な形状「様式」を持っている点に着目した。建築物などのより一般的な形状においても、所望の反射特性が与えられた時に、それに適した形状「様式」を自動計算することで、入力形状を損なうことなく反射特性の最適化を行う手法を目指した。技術的には、レンダリングに用いられる光輸送シミュレーションの微分値を利用し、その結果をもとに弾性体エネルギーを用いた形状保存変形を行う方法を提示した。 プロジェクト2:Fabricable 3D Wire Art (SIGGRAPH 2024, to appear) 同様にグラフィクスアルゴリズムの微分値を用いて、伝統的な彫刻方法の一つであるワイヤ曲げによって作成可能な三次元曲線を自動で生成する技術を開発した。特に、所望する見た目を様々な表現形式によって指定できる手法を提案した。画像や3次元モデルの他に、テキストなどをもとにワイヤ形状を作成できる。実際には、学習済みのニューラルネットワークを用いて、三次元曲線のレンダリング画像と入力(テキストなど)の距離を定義し、それを最適化した。この際必要な、微分可能な3次元曲線のレンダリングソフトウェアを開発した。本手法ではさらに、最適化された形状を実際に実現するための治具を3Dプリンタで作成できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題から、すでに2件の論文がピュータグラフィクス分野のトップ国際会議であるSIGGRAPHに採択されている点が上記の評価の主な理由である。この点は、本年度に実施された研究の進捗を客観的に測る上でも非常に評価できると考えている。一方、本研究課題では当初、陰関数を用いた形状表現を応用した形状デザインについても考慮していたが、技術的な難しさや国際的な研究競争の激化などを受け、本年度はまずメッシュや曲線などの陽的な形状表現において、微分可能グラフィクス技術の応用を模索するという方向修正を行なった。しかし、当初に計画していたように、トポロジー変化の容易さなどの陰的形状表現の利点を利用することも創造的なデザイン技術の発展に重要であるため、本年度に得られた知見をもとに、こうした陰的形状表現についても研究を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は本年度の研究で得られた知見をさらに活かし、現状の研究成果を拡張していくことで更なるインパクトを与えることを狙う。具体的には、グラフィクスアルゴリズムの微分値を用いた最適化により形状のデザインを行う際、得られた微分値をそのまま使うのではなく、上手い正則化や最適化手法を用いることで形状の特性を保存しつつ変形を行うことが重要であることがわかった。しかし、形状デザインの過程において、例えば作ったものが実際に立って、他のものを支えることができるかどうかなど、さまざまな物理的制約が考えられ、それらをすべて考慮できるような正則化を与えるところまでは現状では至っていない。よって、このような正則化や最適化手法をさらに拡充させていくことによって、本研究課題の応用可能性を拡充していく計画である。この方策によって、来年度以降もさらに国際学会へ論文を投稿し、成果を増やしていくことを目指す。また、先に述べたように、本年度用いたメッシュや曲線などの陽的形状表現だけでなく、陰的形状表現を用いた形状デザイン手法についても研究を進めていく予定である。
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