研究課題/領域番号 |
23KJ0706
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹田 慎次朗 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 磁気リコネクション / プラズマ / トモグラフィ / 高エネルギー電子 |
研究開始時の研究の概要 |
磁場のエネルギーがイオン・電子の運動エネルギーに変換される磁気リコネクション現象における電子の加速・加熱機構について、実験装置TS-6における球状トカマク合体実験を通じて検証する。本研究では、電子が放出する制動放射光の画像計測を軟X線領域で行うことで高エネルギー電子の空間分布を測定する手法を発展させ、異なるエネルギー帯での同時測定によるエネルギー分布の推定や多視点からの計測による3次元分布計測を実現する。開発したシステムを用いた実験によって、理論的に予測されるさまざまな電子エネルギー付与機構の実験的検証を行う。
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研究実績の概要 |
磁気リコネクション現象における高エネルギー電子生成機構の実験的検証を行うため、マイクロチャンネルプレートを用いた多視点軟X線画像計測システムの開発を行い、開発した計測システムによって軸方向に合体するトーラスプラズマの観測を行った。 プラズマ中で接近した反平行の磁力線が繋ぎ変わる磁気リコネクション現象では磁場のエネルギーがプラズマ粒子の運動・熱エネルギーに変換されるが、特に繋ぎ変わる磁場に対して垂直な磁場が存在するガイド磁場リコネクションでは特徴的な四重極状の静電ポテンシャルの形成につながる電子加速が理論的に予測されている。 この加速機構について検証を行うため、電子が放出する制動放射を電子温度より高いエネルギー帯である軟X線領域に絞って観測することで、非熱的な高エネルギー電子の分布を計測した。また、4つの異なるフィルターを通して同時に計測を行うことで、大まかなエネルギーの分析も可能にした。 開発したシステムを用いた計測によって、異なるエネルギー帯における発光の2次元分布が取得され、理論的に予測されていた磁気リコネクションのX点や下流領域における軟X線発光を検出することに成功した。これらの発光強度の磁場依存性が領域によって異なることも確認され、それぞれ異なるメカニズムで高エネルギー電子が生成されていることが示唆される。また、静電プローブによって静電ポテンシャルの計測も行った結果、四重極状のポテンシャル形成につながるような高エネルギー電子の流出を確認することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は200eVを上回るような高エネルギー電子の生成を予測しており、そのようなエネルギー領域での計測を行えるように準備を進めていた。本研究ではフィルターによって観測する光のエネルギー帯を制限しており、最初に準備していたフィルターはそれぞれ100eV未満、100eV以上、200eV以上、300eV以上の領域で観測することを想定していたものだった。 しかし、実際の実験では電子のエネルギーが想定していたより低く、200eV以上の発光がほとんど観測されなかった。そのため、準備していたフィルターの半分は使用できず、他の種類のフィルターを用いて実験を行う必要があった。新たなフィルターの検討および確保に時間が必要となったため、実験に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
線スペクトル発光の影響を可能な限り排除し、純粋な制動放射成分に限って計測を行うためには100eVを大きく上回るようなエネルギー帯での計測が不可欠である。そのため、今後はコイル電源の増強によって更なる高磁場化を行うことで磁気リコネクションによって変換されるエネルギーを増大させ、より高い電子エネルギー領域での実験を試みる。 エネルギー分布解析については、シミュレーションなどの数学的手法とも組み合わせることで、熱的平衡に達していないような電子についてもエネルギー分布推定が行えるような手法の確立を進める。開発した手法によって得られる電子エネルギー分布の検証を行うために、ファラデーカップなど直接的に電子エネルギー分布が測定できるような計測系の開発も行う。 また、制動放射光の計測だけでは電子エネルギーと密度を区別して計測を行うことが難しいため、レーザー干渉計やトムソン散乱計測、Langmuirプローブなど、電子密度を計測できるような装置も同時に使用しての実験も進める予定である。
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