研究課題/領域番号 |
23KJ0729
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分30020:光工学および光量子科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 俊 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 波長可変レーザー / ラマン散乱 / イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
生体の複雑な仕組みを解明するためには,細胞内の様々な生体分子を生きたまま可視化する技術が重要である.本研究では,高速・広帯域波長可変光源を作製し,新たな生体イメージング技術として期待される誘導ラマン散乱 (SRS) 顕微法の生体分子識別性能を飛躍的に向上させることを目指す.高速・広帯域・高感度の全ての要件を満たしたマルチバンドSRSイメージングの実現により,細胞内で起きる生体分子の複雑なダイナミクスを高い時間分解能で可視化することが可能となる.
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研究実績の概要 |
本研究では、高速・広帯域波長可変光源とこの光源を用いた誘導ラマン散乱(SRS)イメージングシステムの開発、そしてその生体イメージング実証を目指している。本年度はまず、広帯域波長可変ファイバ光パラメトリック発振器(FOPO)の構築と、FOPOとYbファイバレーザーとの統合に取り組み、2000 cm-1を超える広帯域波長可変光源を実現した。これによりラマンスペクトルで代表的な波数領域である指紋領域とCH伸縮領域全体をカバーすることが可能になった。また、この波長可変光源を導入したSRSイメージングシステムの構築を行い、標準試薬と固定細胞を用いた実証実験で、広帯域かつ高感度にイメージング可能であることを示した。本イメージングシステムは、FOPOの大きな雑音により感度が低下するという問題を回避し、ショット雑音限界のノイズ性能を有することが新規性の一つであるが、これについても実験により確かにショット雑音限界であることを確認した。 一方、イメージング応用についても様々な検証を進めている。まずイメージングシステムの広帯域性を最大限活用し、標準試薬や生細胞の指紋領域・CH領域でのスペクトルイメージングを行った。結果として、参照データとよく一致するスペクトルが得られた。また、2つの光源の波長をそれぞれ独立に制御可能であるという利点を活かし、前期共鳴SRSにも取り組み、その特性を評価している。さらに、SRS顕微鏡を用いた観察で一般的な生体試料とは異なり、低波数領域に特徴的なピークをもつ固体材料のイメージングも行っている。初期段階ではあるが、固体材料へも適用可能であることを示した。今後さらにイメージング応用を進めていくとともに、各応用に適したシステム開発も並行して行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ファイバ光パラメトリック発振器による高速・広帯域波長可変光源を構築し、この光源と低雑音レーザーを組み合わせた誘導ラマン散乱(SRS)イメージングシステムを構築できたため。またこのSRS顕微鏡を用いたイメージング応用についても既に取り組んでいるため。 まず波長可変光源のチューニング範囲については、最終目標の80%である2000 cm-1を達成しており、一般的に使用されている光源の300 cm-1から大きく拡大することに成功した。実験計画では2年目に実施する予定であったマルチバンドSRS顕微鏡の構築も今年度に並行して行い、特性評価をした上で、実際にイメージングができる段階に到達している。標準試薬での実証実験や生細胞イメージングなどのイメージング応用も既に取り組んでいる。さらに当初の計画には含まれていないが、構築した波長可変光源の広帯域特性を活かすことで、これまではほとんど開拓されてこなかった固体材料へのイメージング応用についても検討・初期実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題をさらに推し進めるために、誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡のイメージング応用に注力する。広帯域SRSイメージングシステムを構築したことにより、既存のシステムでは実現が困難であったイメージングが可能となった。このシステムの特性を活かし、新たなイメージング応用を開拓していく。具体的には、前期共鳴SRSや固体材料のイメージングに引き続き取り組んでいく。また、試料情報を多角的に可視化するためには蛍光イメージングなどの他手法との組み合わせが有効であるため、これを実現するためのシステム構築を行う。さらに生細胞の広帯域イメージングで取得するスペクトル情報を処理・活用するための解析手法の確立にも取り組む。
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