研究課題/領域番号 |
23KJ0754
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福山 雄大 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2025年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2024年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 食行動 / 前頭前野 / Ca2+イメージング / 記憶エングラム |
研究開始時の研究の概要 |
摂食行動は栄養要求性に起因する代謝制御と、嗜好性や安全性などの食物に対する心理的価値(=食物価値)に基づく認知制御との両方の制御を受ける。認知制御は栄養要求上不要な摂食行動を導き疾患リスクを高めることがあり、摂食行動の改善には摂食の認知制御メカニズムについて神経科学的な理解が重要である。本研究では、摂食経験依存的に食物価値が変化することに着目し、摂食経験記憶を保存する記憶エングラム(=食記憶エングラム)を同定し、光遺伝学手法を用いて介入操作することで、食記憶に基づく摂食の認知制御神経基盤を解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、新規餌チーズの摂食によって活性化することを発見した前頭前野領域における神経活動解析を行った。前頭前野ニューロンにアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いて、カルシウムイオン濃度依存的に蛍光強度が変化するGCaMPを発現させ、脳搭載型小型顕微鏡を用いたCa2+イメージングを行い、複数の餌呈示中の前頭前野神経活動を解析し、前頭前野が餌の識別に関与するのかを検討した。解析結果から、前頭前野には餌の有無に反応する別集団のニューロン群が存在することが示された。さらに、既知餌であるペレットもしくは、新規餌であるチーズやチョコレート摂食中のニューロンの神経活動を測定した結果、既知餌と新規餌摂食時に神経活動が増加するニューロンが前頭前野に分かれて存在することが観察された。これら神経活動の観察から、前頭前野領域において餌の有無や餌の新規・既知の識別が行われていることが示唆された。この結果から、前頭前野において新規餌摂食時に活性化するニューロン集団に、新規餌に関する記憶が保持される可能性が示唆された。 また、前頭前野において新規餌摂食中に活性化したニューロンをラベルし、そのニューロン集団に対して介入操作を行うことで、そのニューロンの役割を行動レベルで明らかにする実験も開始した。Fos-TRAP2(DeNardo et al., Nat Neuroscience, 2019)遺伝子組み換えマウスを導入した。このマウスの前頭前野にCre依存的に蛍光タンパク質を発現するAAVを注入することで、新規餌摂食時に活性化したニューロンを蛍光標識し、化学遺伝学的に神経活動を操作するシステム(DREADD: Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)を利用する。本年度は活性化したニューロンを標識するための条件設定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小型顕微鏡を用いたCa2+イメージングにより、摂食行動中の前頭前野の神経活動を1細胞レベルで解析することに成功した。この実験により、前頭前野において餌の種類により活性化するニューロン集団が分かれて存在し、同じ餌の摂食時には前頭前野の似たニューロン集団が活性化することが示唆された。この結果は前頭前野において摂食経験を記憶する記憶エングラムの存在を示唆すると考えられる。食記憶エングラムの同定に近づいたと考えられるため、当初の計画通りの進展がみられると判断した。 一方で、新規餌摂食時に活性化したニューロンをラベルし介入操作を行う実験では、研究開始当初に予定していたc-fosタグシステムによる条件検討が難航し、新たにFos-TRAP2マウスを導入し活性化したニューロンのラベル手法の条件設定を行ったため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに設定した条件で、Fos-TRAP2マウスを用いた、化学遺伝学的な神経活動操作(DREADD実験)に取り組むことで、新規餌摂食中に活性化したニューロンが新規餌摂食に関する記憶を保持するかどうかを、行動レベルで明らかにすることを目指す。 Ca2+イメージングによる前頭前野の神経活動計測をさらに進め、餌の種類による神経活動の違いについてより詳細な解析を進める。 新規餌の初回摂食時と比較をして2回目摂食時に摂食量の増加が観察される食物新奇性恐怖課題を用いて、複数の脳領域に対して領域内のニューロンの活動を抑制するDREADD実験を行うことで、食物新奇性恐怖に対する各脳領域の役割を明らかにする。
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