研究課題/領域番号 |
23KJ0783
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中井 宏紀 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | スピン軌道相互作用 / 平坦バンド / 励起スペクトル / ピンチポイント |
研究開始時の研究の概要 |
固体結晶中におけるスピン軌道相互作用は電子の軌道運動とスピンの向きを結合し、スピンに依存した伝導現象や電子状態の変化をもたらす。特に、近年注目を集めている4d・5d遷移金属化合物ではスピン軌道相互作用の効果が大きく、結晶場の下でスピンと軌道が絡み合って生じる擬スピンがミニマムな電子自由度となり、多彩な量子現象を生み出す源となる。 本研究では、この擬スピン自由度を持つ電子が格子を遍歴する際に生じるスピン依存量子干渉効果に注目し、その観点から物質のバンド構造や誘電性、磁性を統一的に捉えることを目的とする。
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研究実績の概要 |
強いスピン軌道相互作用によって実現する平坦バンド系に焦点を当て、その励起スペクトルの解析を行い、主に以下の2つの研究成果を得た。 1. スピノルアイス相におけるピンチポイントの発現 パイロクロア格子上の拡張ハバード模型を平均場近似により解析し、スピン軌道相互作用と電子間相互作用の大きさに応じて、非磁性金属相・電荷秩序相・スピノルアイス相の3つの相が現れることを明らかにした。スピノルアイス相とは、スピンが副格子に依存した異なる方向に偏極することで有限のスカラースピンカイラリティを有するという特徴を示し、スピン軌道結合平坦バンド系に特有の相である。さらに、スピノルアイス相における励起スペクトルにはピンチポイントと呼ばれる鋭い構造が現れることを明らかにし、スピン分解ARPESによってこのピンチポイントを観測できる可能性についても検討した。 2. ピンチポイントの起源の解明 様々な平坦バンド系で励起スペクトルを調べたところ、特定の平坦バンド系でのみピンチポイントが観測されることが判明した。そこで、ピンチポイントの起源を明らかにすることを目的に、平坦バンド波動関数のトポロジーに注目した解析を行った。通常の平坦バンド系はその波動関数が有限領域に局在した状態(compact localized state, CLS)だけで与えられるが、そのCLSに非局所的な拘束条件がある場合には非可縮ループ状態(noncontractible loop state, NLS)と呼ばれるCLSとはトポロジカルに異なる状態が必要になる。我々はCLSに対する非局所的な拘束条件に基づいて対応するNLSを構成する公式を導出し、ピンチポイントの持つ異方的な構造がNLSの干渉によって生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として挙げている「特異なバンド構造に起因した素励起の性質および輸送現象」に関して、スピン軌道結合平坦バンド系に特有の電子相とその励起スペクトルに現れるピンチポイントの起源を解明することができた。また、この成果に関しては論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
二つのトポロジカルに異なる平坦バンド波動関数を関係づける公式を導出したことにより、特異平坦バンド系に特有の物理の開拓が進むことが期待される。そこで、特異平坦バンド系におけるトポロジカル不変量の特定と、輸送現象に現れる特徴の発見を目指す。
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