研究課題/領域番号 |
23KJ0787
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西野 耀平 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 重力波 / 量子測定 / 不確定性原理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、国立天文台の重力波検出器TAMA300を用いたkHz帯重力波観測を目指した、量子雑音低減技術の開発と技術実証である。現在世界で稼働中の重力波望遠鏡はその帯域が1-100Hz付近に最適化されている。この帯域は中性子星連星合体の合体前の数秒で発せられる重力波を捉えるのに適しているが、合体中から合体後にかけて発せられるkHz帯の重力波を捉えることはできない。kHz帯重力波には中性子星内部の情報が反映されていると考えられ、理論的に非常に重要である。本研究は最終的にTAMA300を用いてこのkHz帯を補うことを目指し、そのための技術開発と実証を行うものである。
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研究実績の概要 |
重力波検出器の高周波帯域を制限する光の散射雑音はレーザーの強度を上げることで低減することができる一方、低周波領域で量子的な輻射圧雑音を励起してしまう。これは検出器に用いられる鏡の位置の測定精度を上げると運動量の不定性を上げてしまうということであり、ハイゼンベルグの不確定性原理の帰結である。TAMA300の場合、kHz帯の重力波検出のためにはレーザーパワーを上げることが不可欠であり、それに伴う量子輻射圧雑音を低減する必要があることが分かった。 量子輻射圧雑音を回避する手法の一つが運動量測定である。運動量は異なる時刻同士で交換するため、不確定性原理の壁を超えることができる。このような運動量測定装置はスピードメーターと呼ばれる。kHz帯の検出に向けて、高周波に最適化した検出器のデザインとスピードメーターを組み合わせることで高パワーレーザーに伴う問題を回避する。 報告年度内で行った研究は以下のとおりである。まず、提案されている偏光をベースとしたスピードメーター(偏光型スピードメーター)の制御法を提案した。この制御法は干渉計に用いる主レーザー光源の半分の波長の光を用いるというものである。 次に偏光型スピードメーターの原理実証に向けた光学系の設計を行った。特に二つの波長と偏光をうまく組み合わせることが必要なため、慎重なシミュレーションを行った。 最後に光学系の組み立てを行った。まず主となる光共振器を組み立て、レーザーの周波数に対して共振器の長さを安定化させた。次に信号となる光を共振器の反対側から打ち込み、位相変調を加えることで疑似的な変位信号とし、伝達関数の測定を行った。結果として位置測定と等価な伝達関数を得た。最後に偏光素子を加え、系をスピードメーターに変換し、伝達関数測定を行い、スピード性を確かめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の採用初年度の目標はプロトタイプ実験において位置測定の伝達関数を得ることであったが、実際にはスピード型の伝達関数を測定することができた。この測定は次のステップである古典的強度雑音の測定、さらには量子強度雑音の低減に向けた最初のベンチマークであり、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在のセットアップに二本目のレーザーを注入し、提案した制御法の実証に挑む。同時に軽量鏡を用いた古典強度雑音の検証実験に向けた実験系の設計を行う。特に伝達関数測定とは異なり様々な雑音要因を分析し、各雑音源への要求値を決めていく必要がある。 さらには今後の量子雑音の低減実証に向けてより詳細な計画を練る予定である。より具体的にはミリグラムスケールの軽量鏡とその懸架法の開発、および安定な制御法の確立などである。以上の方針で将来的なkHz帯の重力波検出をより現実的なものにしていく所存である。 また既存の量子雑音低減技術に限らず、新たな方式を理論面からも展開していきたいと考えている。
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