研究課題/領域番号 |
23KJ0791
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三宅 祥太 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 量子散乱問題 / 漸近完全性 / 波動作用素 |
研究開始時の研究の概要 |
量子力学において, 固定された標的粒子に入射粒子が衝突する現象を量子散乱と呼ぶ. この二粒子の相互作用はポテンシャルにより記述される. 十分遠方で減衰するポテンシャルの下では散乱された粒子は十分時間が経てば, ポテンシャルの影響から逃れ, 自由粒子のように振る舞うことが予測される. この性質は漸近完全性と呼ばれ, 散乱粒子の分布からポテンシャルを復元する量子逆問題において重要な性質である. 本研究では時間周期的外電場が印加された荷電量子多体系に関する漸近完全性問題を扱う.
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研究実績の概要 |
本研究は「時間周期的外電場の印加された長距離型ポテンシャルを持つ荷電量子二体系」に対応する波動作用素の漸近完全性に関するものであり, これは時間周期的ポテンシャルをもつ非荷電量子二体系のHamiltonianの漸近完全性問題に帰着されるものである. 昨年度は時間周期的ポテンシャルを持つ非荷電量子二体系のHamiltonianに対応するFloquet Hamiltonianを用いた既存の手法を経由せずに, 直接的にHamiltonianによって生成されるユニタリ時間発展作用素の解析を行う手法についての研究を行ってきた. そこで量子ウォーク理論等で主に用いられるユニタリ時間発展作用素の解析の手法に関する理論を学び, 発展させる試みを行った. また現在では, T.Adachi, M.Kawamoto(2012)において部分的に解決された問題である, 「回転する電場を含む外部電磁場が印加された系における短距離型ポテンシャルを持つ荷電二体粒子系」における漸近完全性問題を研究対象に加えて探究を行っている. これは回転対称性を持つ短距離型ポテンシャルに関しては解決されている問題であるが, 直感的な議論によりこの結果は回転対称性を持たない一般の短距離型ポテンシャルについても成立することが強く予想され, その理論的正当化が期待されるためである. この漸近完全性を示すために, 系の時間発展に関する伝播評価の研究を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
時間周期的ポテンシャルをもつHamiltonianの漸近完全性問題の問題に関してはM.A.Astaburuaga, O.Bourget, V.H.Cortes(2015)などの論文を参考にし, Hamiltonianのポテンシャル項の影響をユニタリ時間発展作用素に直接反映させる取り組みを行ったものの, 新規性のある成果は得られなかった. そこで, 現在では前述のT.Adachi, M.Kawamoto(2012)の問題に取り組み始めた段階であり, 成果は得られていない.
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今後の研究の推進方策 |
ここでは現在主に行っている「回転する電場を含む外部電磁場が印加された系における短距離型ポテンシャルを持つ荷電二体粒子系」における漸近完全性問題の研究方策について述べる. 本年度はこの系のHamiltonianに対応するFloquet Hamiltonianの伝播評価をSkibstedの手法を用いて導出し, それを用いて漸近完全性の証明を行う予定である. ここでSkibstedの手法とは, 時間発展する波動関数の時間による減衰度による帰納法を用いた評価手法であり, E.Skibsted(1991)においては外電場の印加されていない量子多体系の伝播評価に用いられたものである. これはT.Adachi(2007)において外電場の印加された荷電量子多体系に対応するFloquet Hamiltonianの伝播評価においても用いられたため, 本研究対象に関しても有効に適用することができると考えられる. また次年度以降においては, ここで得られた結果をポテンシャルが長距離型の場合にも証明するために, より精密な伝播評価を行う予定である.
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