研究課題/領域番号 |
23KJ0803
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田村 隆太郎 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 小児希少疾患 / PFIC1 / 肝臓 / 小腸 / コリン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型(PFIC1)の病態発症機構を明らかにし、治療法の開発につなげることを目的とする。当研究室ではPFIC1の原因遺伝子であるATP8B1を欠損させたマウスが、PFIC1患者と同様の表現型を呈することを確認している。本マウスをPFIC1モデルマウスとして用い、解析することで、ATP8B1欠損がどのようにしてPFIC1患者の病態を引き起こすのかを明らかにし、治療法の開発につなげる。
|
研究実績の概要 |
昨年度(2023年度)は進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型(PFIC1)のモデルマウスである腸管上皮細胞特異的Atp8b1欠損マウス(IEC-KO)を用いて解析を行った。具体的には以下の二つである。一つ目はPFIC1患者の肝保護を目的としたコリン補充療法の開発、二つ目はPFIC1患者における成長障害の原因探索である。コリン補充療法の開発に関しては、IEC-KOマウスを用いてコリンの有効血中濃度・有効容量の検討を行った。経口投与試験や尾静注試験などの動態試験により、各種動態パラメーターの推定を行った。今回得られたデータをもとPFIC1の治療法開発を引き続き進めていく。 成長障害の原因探索は、マウスの表現系解析や文献調査などから、肝臓に発現するあるホルモンの関与が示唆された。そこで、このホルモンが本表現系に必要であるかを調べるため、AAVを用いて肝臓特異的にホルモンを欠損させることを試行した。現在はAAVのセロタイプや、編集手法の検討を行っている段階ある。また、IEC-KOマウスにおいてホルモンが肝臓で上昇する原因も不明である。私はこの原因を解き明かすことには新規性があると確信しており、残りの二年間でこの因果関係を解明したいと考えている。 さらに昨年度はIEC-KOマウスを用いた研究に関する論文が、国際的に権威あるジャーナルであるNature communicationsに掲載された(Tamura, Ryutaro, et al. 2023. “Intestinal Atp8b1 Dysfunction Causes Hepatic Choline Deficiency and Steatohepatitis.” Nature Communications 14 (1): 6763.)。本論文によりPFIC1病態に関する理解がより世間に広まることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画はやや遅れている。 コリンの動態試験に関しては予定通り実施できており、確度の高いデータも取得できている。 一方で、Atp8b1の小腸における発現確認やOrganoidを用いた実験は若干停滞気味である。 まず、発現確認に関しては、当初の想定に反してCre-loxPシステムで欠損させたAtp8b1のmRNAがその欠損部位(exon3)以外完全な形で残っていることが判明した。そのため、Atp8b1の発現をsmFISHなどのプローブを用いて検出する際に、既存のプローブではAtp8b1を欠損させた細胞であっても検出されてしまった。そこで、現在exon3に特異的なプローブを特注しているため、それが完成次第研究に取り組む予定である。 Organoidを用いた実験は、Organoidの培養条件と遺伝子操作方法の検討に想定以上に時間がかかってしまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はPFIC1患者における成長障害の原因探索をメインに据えて研究を進めていく。具体的には成長障害の原因と推定されるホルモン遺伝子の編集方法の確立とそのホルモンが上昇する原因探索を行なっている予定である。遺伝子編集はCRISPR-Cas9システムを用いる予定であり、複数種類のCas9とgRNAの導入方法を検討していく予定である。ホルモン上昇の原因探索に関しては、既存のシステムでは追求することが困難であることが想定されるため、その分野に強みをもつ研究機関とも協力していきながら、研究を進めていく予定である。
|