研究課題/領域番号 |
23KJ0816
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花澤 美幸 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 相分離 / 結晶化 / アモルファス / 透過電子顕微鏡 / 原子分解能 / 時間分解観察 / 無機化合物 / 動的挙動解析 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶のような長距離秩序を持たないアモルファスは,特異な力学的および光学的物性を持つことから材料やデバイスへの応用が期待されているが,従来の構造解析手法では構造情報を抽出することが困難である.本研究では,透過電子顕微鏡直接観察とトポロジカルデータ解析を融合することで,アモルファス中の局所構造およびその形成機構に関する知見を収集する.単一化合物試料を用いて手法を確立し,過渡的もしくは生成物としてアモルファスを与える化学反応を伴う複雑な系へと順次展開することで,アモルファスにおける短距離秩序形成過程を時間発展的に追跡する.
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研究実績の概要 |
本年度は,混合相からの相分離・結晶化初期過程における過渡構造および秩序獲得機構の解明を目指して透過電子顕微鏡(TEM)による連続観察を行った. 我々はこれまでに,カーボンナノチューブ(CNT)の内部空間を観察場として用いた単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡(SMART-EM)法によって,局所的・偶発的に起こる結晶化初期過程の観察に成功してきたが,構造記述子を持たないアモルファス・短距離秩序のTEM像上での構造解析は未だ困難であった. そこで,SMART-EM法によって取得した原子分解能TEM像に数理的解析手法を導入することで,長距離秩序を持たない混合相における局所構造解析および動的挙動の解明を試みた. その結果,CNTに同時に内包させた異種化合物の混合相から,イオン性の構造体が相分離し界面を持って各結晶構造を形成する様子が明らかになった.TEM像の強度情報に基づくトポロジー的解析により,アモルファスからの相分離に伴う結晶性の増加を定量的に評価することに成功した.そして,原子分解能のTEM像上から抽出した分子の位置情報に基づき,近接する点同士の距離がランダムに分布した状態から,最終的にヘテロ構造を構成する結晶構造の各距離に対応する分布へと変化することが明らかになった. 以上のように,イオン性分子混合相における結晶化観察においてアモルファス内の局所的なイオン凝集挙動・秩序形成を認め,相分離・核生成に至るまでの時間発展的な結晶性の獲得を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,原子分解能電子顕微鏡観察と数理的解析手法を融合することにより,アモルファスにおける秩序形成過程の時間発展的解析および機構解明を目的とする.本年度は,初年度としてまずアモルファスからの連続的観察および解析手法の導入・確立を目指し,本研究室で開発しているSMART-EM法の適用範囲をさらに拡大するべく研究を展開した.これにより,構造記述子を持たない短距離秩序においても画像の幾何パターンを取り出すことに成功し,これまで解析が困難とされてきたアモルファスにおける構造変化の探究の可能性を見出した.現在までに,当初の単一化合物での計画を超えてより複雑な複数化合物の混合相において相分離・結晶化過程の時間発展的な秩序形成機構解析を行っており,計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた,イオン性分子混合相における相分離・結晶化現象の動的挙動に関する知見をさらに深く探究するべく,構成イオンの組み合わせを変えた混合系における時間発展的観察や,異なる分析手法を用いた解析も含めて検討する.また,この原子分解能TEMと数理的解析手法を融合した直接観察手法の確立のため,より複雑な変化を伴う化学種・現象においても時間発展的なアモルファス構造解析に取り組み,本手法のより広範な応用を目指して研究を展開する.
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