研究課題/領域番号 |
23KJ0826
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小関 健太郎 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 存在論 / 価値論 / マイノング / 形而上学 / 非存在者 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちの身の回りにはさまざまなものが存在しているが、想像上のキャラクターや未来の出来事のような、ある種の「存在しないもの」もまた私たちにとって身近なものであり、同時に多くの哲学的な論点を含んでいる。本研究では、現代の非存在者の形而上学と、その重要な源泉のひとつとなっているオーストリア哲学の伝統を手がかりとして、特に (1) 美的価値や道徳的価値といった価値に関する心の働きや言明、(2) 要求や約束といった言語行為、の各領域における非存在者の問題を明確化した上で、非存在者の形而上学の新しい応用可能性を示すことを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実施期間(2024年1月から3月)は、マイノング (Alexius Meinong) の哲学における非存在者の形而上学と価値論の関係の解明という観点から、主にマイノングの価値論の基礎的な研究に取り組んだ。今期間を含む本研究課題の1年目は、非存在者の理論の応用領域のひとつとしての非存在者の価値の問題を中心に研究を進めている。 具体的には、本年度は、特に (1) 価値と感情の問題、(2) 価値の存在論的身分の問題の2つの問題に焦点を当ててマイノング価値論の再構成を進めるとともに、これらの論点に関して同時代のフッサール (Edmund Husserl) の価値論との比較にも取り組んだ。 これらの研究を通じて次の点が明確になった。まず、マイノングの後期価値論には相対的価値としての「個人的価値」と絶対的価値としての「非個人的価値」の二つの価値概念が並立しているが、それぞれが独自の仕方で評価主体の情動的な志向的経験に関わっている。この二重性は非存在対象の価値についても当てはまると考えられる。そして、価値の存在論の面ではある種の基づけ関係が重要な役割を果たしており、この点がマイノングの価値論の現代的な再構成においても重要になると予想される。 また並行して、マイノングやフッサールの価値論の背景となっている志向性理論についての形式的・理論的な研究も進めた。さらに、マイノング主義形而上学およびマイノング価値論の現代的な再構成や影響に関する検討として、両理論に影響を受けているR. シルヴァン (ラウトリー) の価値論および環境倫理の研究にも着手しており、引き続き研究成果の発表を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中断による開始時期の都合により本年度の研究実施期間は限定的であるが、すでに一部の研究成果を対外的に発表できていることに加えて、現代の形而上学、メタ倫理学の観点からの研究にも着手できており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、マイノングの価値論の全体像の解明のために、マイノングの後期価値論における二つの価値概念のうち、特に「個人的価値」に関する議論の前提になっている、前期の価値論についてもテキストの検討を進める。そしてこうした全体像を踏まえて、非存在者の価値の問題がマイノングの価値論においてどのように扱われるかを明らかにするとともに、それを現代のメタ倫理学(特に価値の存在論的問題)との関係で位置づけることに取り組む。
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