研究課題/領域番号 |
23KJ0837
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分49070:免疫学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 潤哉 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 好塩基球 / 転写因子 / 分化経路 / RNAシーケンス |
研究開始時の研究の概要 |
好塩基球は末梢血白血球のわずか1%に満たない希少な細胞にもかかわらず、慢性アレルギー炎症や寄生虫感染防御に関与する重要な細胞である。好塩基球が骨髄でどのように分化するかは謎に包まれていたが、申請者は世界に先駆け、骨髄内の好塩基球が成熟・未熟好塩基球の二集団からなることを発見した。加えて転写因子Foxo1を好塩基球の機能成熟に関与しうる分子として同定した。本研究では遺伝子改変マウスやRNA-seq, ChIP-seqなどのオミクス解析を駆使することで、好塩基球におけるFoxo1の役割を解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
好塩基球は希少な免疫細胞だが、アレルギー炎症や寄生虫感染防御などに関わる重要な細胞である。好塩基球の骨髄内での分化機構については不明点が多かったが、研究代表者らは以前の研究で、好塩基球が骨髄内で前駆細胞「プレ好塩基球」から成熟した好塩基球へと分化することを発見した。しかし、どのような分子機構がこの分化経路を制御しているのかは未解明であり、本研究ではプレ好塩基球から成熟好塩基球への分化に関与し得る転写因子の同定と、その機能の解析を行った。 研究代表者は、好塩基球分化に関するRNAシーケンスをin silico解析することで、候補転写因子としてFoxO1を同定した。FoxO1の好塩基球特異的欠損マウスを樹立し、フローサイトメトリーで解析したところ、脾臓や血中などの末梢部ではFoxO1欠損による成熟好塩基球数の大きな減少が認められた。以上より、FoxO1は成熟好塩基球の末梢における生存、あるいは骨髄から末梢への遊走に関与する可能性が示唆された。さらに研究代表者は、好塩基球特異的FoxO1欠損マウスの骨髄好塩基球をシングルセルRNAシーケンスで解析し、FoxO1欠損に伴う発現変動遺伝子群を同定した。現在この遺伝子群の中で、どの遺伝子がFoxO1欠損による表現型の原因遺伝子かを解析中である。最後に好塩基球のFoxO1欠損によるin vivoの影響を調べるため、欠損マウスに対して好塩基球依存性皮膚アレルギーモデル(IgE-CAI)を惹起した。その結果、対照群と比べて欠損マウスでは炎症の著明な減弱が認められた。以上の研究成果は2023年の日本免疫学会学術集会にて口頭発表を行い、ベストプレゼンテーション賞に選出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らは好塩基球特異的FoxO1欠損マウスの樹立を既に完了しており、このマウスの主要な表現型についても確認済である。現在、研究段階は確認された表現型を裏付ける分子メカニズムの解析に移っており、そのために必要なFoxO1欠損に伴う遺伝子発現変化に関するデータについても、FoxO1欠損好塩基球のシングルセルRNAシーケンスを実施し取得済である。研究の進捗は研究成果を学会発表できる状態にまで達しており、実際に2023年日本免疫学会学術集会にて本研究テーマの口頭発表を行い、ベストプレゼンテーション賞に選出されるなど高い評価を得ている。以上より、現在までの進捗状況は概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
好塩基球内でFoxO1が制御する遺伝子群のデータについてはシングルセルRNAシーケンスにより取得済だが、FoxO1欠損に伴う表現型に寄与する候補遺伝子をさらに絞り込むために、好塩基球のFoxO1に対してChIPシーケンスを実施し、FoxO1が直接結合する遺伝子群のデータを取得する予定である。またFoxO1が好塩基球の末梢における生存、あるいは骨髄から末梢への遊走に関与する可能性について言及したが、これらの仮説を検証すべく、in vitroの実験にてFoxO1欠損好塩基球の生存能力や、走化因子に対する遊走能を評価する予定である。
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