研究課題/領域番号 |
23KJ0863
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
羽石 悠里 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 腸内細菌 / エネルギー代謝 / 多価不飽和脂肪酸 / 生活習慣病 / 食用油 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、血糖値の上昇抑制や食欲抑制作用が報告されているGPR119に着目し、食由来腸内細菌代謝物がGPR119に及ぼす影響を解明し、食事と腸内細菌の相互作用による宿主の生体エネルギー代謝調節機構を明らかにすることを目的とする。これにより、GPR119の新規リガンドとして、食事由来の腸内細菌代謝物が同定され、GPR119を介した代謝改善メカニズムが明らかになり、肥満や糖尿病などのエネルギー代謝疾患の予防を目的とした新たな機能性食品や治療薬への応用につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、腸内細菌叢を活性化する生活習慣病予防・改善を目的とした新規機能性食品の開発のために、高脂肪食誘導性肥満モデルマウスを用いて、エネルギー代謝性疾患に有用な食品成分の探索を行った。 欧米化食によって摂取量が増加している脂質の質的な違いに着目し、脂質を構成する多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食用油が腸内細菌叢の変化を通じて宿主のエネルギー代謝調節に与える影響を検討した。 まず初めに、食用油に含まれる様々な長鎖脂肪酸を用いて腸内分泌細胞株であるSTC-1細胞における腸管ホルモン分泌への影響を評価した結果、長鎖脂肪酸の中でも、多価不飽和脂肪酸は腸管ホルモンの分泌を増加させることが明らかになった。次に、高脂肪食誘導性肥満マウスの生体エネルギー代謝調節への影響について評価すると、食用油の構成脂肪酸の中で、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食用油の摂取は、糖代謝を改善し、大腸の炎症作用を抑制することで高脂肪食誘導性肥満マウスの症状を改善した。さらに、高脂肪食誘導性肥満マウスと比較して、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食用油を摂取したマウスでは、腸内細菌叢の組成が異なっていた。 以上の成果より、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む食用油の摂取は、肥満症状の改善と腸内細菌の構成変化を引き起こしたことから、食用油の構成脂肪酸の質的な違いは、腸内細菌の構成変化を介して生体エネルギー代謝恒常性を調節することが示唆された (Haneishi et al. Sci Rep. 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の学会での発表や国際学術雑誌への投稿に加えて、国際共同研究への積極的な参加により、異なる視点からの意見や新しい研究手法を取り入れることが出来たため。 腸内細菌叢を活性化する生活習慣病予防・改善を目的とした新規機能性食品の開発のために、食事の質的な違いに着目し、食事と腸内細菌の相互作用が宿主のエネルギー代謝に与える影響について検討してきた。研究テーマに関する学術論文や専門領域の著書、学術資料などを綿密に調査し、その多角的な視点から課題解決に取り組んでききた。得られた進捗状況については、既知のデータと独自の成果を組み合わせ、新たな知見を導くためのディスカッションを行い、得られたフィードバックを研究に積極的に反映してきた。 このようにして得られた研究成果を発表者として国内外の学会で発表してきた。さらに、これまでに身に付けてきた研究に対する知識と語学力を用いて、学会発表では、国内外における著名な先生方と積極的にディスカッションを行い、自身の研究をさらに発展させることが出来た。これらの研究に対する積極的な姿勢や自身の研究テーマに柔軟に応用する姿勢によって、ファーストオーサーとして国際学術誌への原著論文を投稿することが出来た(Haneishi et al., Sci. Rep. 2023)。 以上より、積極的な行動力を活かし、自身の研究テーマを精力的に進め、研究成果を広く国内外に発信するとともに、専門知識の整理と深化に努めることで、順調に研究計画を進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、イタリアの国立研究機関での研究留学を通じて、語学力の向上や新しい研究手法の修得に成功し、国際的な研究者としての能力を向上させてきた。修得した新しい研究手法を用いることで、先駆的かつ独創的な研究成果を上げる一助となることが期待される。現在、本研究成果を筆頭著者として2報目の原著論文として国際学術雑誌への投稿を準備中であるとともに、新たな研究成果を国内外の学会で発表を予定しており、次年度はより多くの研究成果を挙げることが期待される。 腸内細菌叢を活性化する生活習慣病予防・改善を目的とした新規機能性食品の開発のため、次年度は特に腸内細菌の構成変化に加えて腸内細菌が独自に保有する代謝経路に着目し、腸内細菌叢の代謝経路を活性化させるような、新たな食品成分の探索に従事していく。 本研究によって、宿主のエネルギー代謝調節機構に影響を及ぼす腸内細菌の菌体成分や代謝経路が明らかになり、肥満や糖尿病などのエネルギー代謝疾患の予防を目的とした新たな機能性食品や治療薬への応用につながることが期待される。
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