研究課題/領域番号 |
23KJ0906
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
木下 智和 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 感圧化学センサー / 静水圧分光分析 / 励起状態ダイナミクス / フォルダマー / メカノバイオロジー / メカノケミストリー / イメージング / 超分子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、大気圧中の高極性溶媒中で折り畳みのコンフォーマーが生成し、静水圧印加に対してコンフォーマーが切り替わるフォルダマー骨格に着目し、生体環境内で機能するフォルダマー骨格を有する感圧化学センサーを用いたマクロな細胞における感圧応答性の解明を目的とする。具体的には、1.水溶性フォルダマーの設計・合成、2.静水圧分光分析、3.細胞導入、の3段階で研究を行い、分子レベルからマクロな細胞中における圧力応答への相関を見出すことを最終目標とする。
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研究実績の概要 |
本件研究課題においては、生体系で計測可能な新たな感圧応答化学センサーの創製と生体内での圧シグナル観測を目的として研究を遂行してきた。研究実施状況について、計画段階で定めた3項目に関して各項目の内容を以下の通り報告する。 項目(1) 水溶性フォルダマーの設計・合成から分子認識評価に関しては、事前に計画したスキームに従って合成を実施した。具体的には、静水圧に対してコンフォメーション変化を示す蛍光フォルダマーに対して、分子末端に親水基としてトリエチレングリコールを修飾した親水性フォルダマーの合成を達成した。また、本研究で明らかになった機構を利用し、立体構造の切り替え可能な感圧応答化学センサーの分子設計および合成も実施した。 項目(2) 水溶性フォルダマーの静水圧分光分析及び蛍光顕微解析の項目では、項目1で新規に合成した親水性フォルダマーの静水圧分光による感圧応答性の分析を行った。溶媒効果の検討を行った結果、親水性フォルダマーにおいては生体環境に近い高極性のメタノール、メタノール―水混合溶媒の条件においても感圧応答性(吸収スペクトル、蛍光寿命)を示すことが明らかになった。加えて、新規に合成した立体型フォルダマーに関しても同様に静水圧分光分析を行い、構造変化に伴うturn-on型の蛍光シグナル変化と、アニオン(トリメシン酸)を比較的大きな平衡定数K = 2×10^6で認識することを明らかにした。また、蛍光顕微解析に関しては、共焦点レーザー顕微鏡ステージ上に静水圧の印加が可能なセルの製作を行った。さらに、光学系の設計及び実証実験を行い、生体環境内での観測に向けての条件確立を達成した。 項目(3) 細胞導入ならびに感圧応答の機構解明に関しては、培養したがん細胞(HeLa細胞)に対して親水性フォルダマーの導入検討を行い、細胞膜を透過して染色できることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
各項目の進捗状況については以下の通り報告する。 項目(1)に関しては計画で示した親水性フォルダマーの合成を達成したことで本項目の研究計画を完了し、これに加えて新規感圧化学センサーの合成も達成した。 項目(2)に関しては計画で示した親水性フォルダマー骨格を利用した感圧化学センサーの感圧応答性の調査及び静水圧蛍光顕微の作製及び実証実験による調査を達成し、本項目の研究計画を完了した。 項目(3)に関しては、2年目以降での実施予定ではあったが、項目1、項目2が予定よりも早く進行したため前倒して実施した。計画で示した細胞導入ならびに感圧応答の機構解明のうち、培養したがん細胞(子宮頸がんのHeLa細胞)への親水性フォルダマーの導入を達成した。 また、上記の項目1~3に加えて、新規の感圧応答化学センサーの機構解明と実証を行い、原著論文(2報)、学会(3回)発表を行った。これらの原著論文では、本研究で示した感圧応答化学センサーの概念が汎用的であり、その高い波及効果性を示してきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては項目3に示した研究計画を完遂することで、ナノ→ミクロ→マクロ階層的な細胞の感圧応答性を明らかにし、当該研究分野に合目的な設計指針となり得る研究成果として提示することを目的とする。具体的には、静水圧を印加させた状態で蛍光シグナル変化を用いて生体細胞や組織の直接的な観測を行い、大気圧下と加圧下での蛍光シグナルの差分を取ることで、細胞や組織の静水圧に対するリアルタイムな応答性の非侵襲的かつ高解像度な計測を行う。また、引き続き新たな感圧応答化学センサーの開発・評価も積極的に行い、分子認識能の調査及びドラッグデリバリーシステムへの展開を行うことで、本研究計画の高い波及効果を示す予定である。
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